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第一章、四人の彼女たち

 

=白金城の財宝の巻===前編==



 第一章、四人の彼女たち



宇部市は大正十年十月三十一日、

旧名宇部村を前後三十三カ年の年月を持って、村政の幕を閉じ、大正十年十一月一日、山口県下で下関市に続いて、二番目に市と成って新発足した。

 村政から一挙に市政に躍進たのは、全国でも異例の年に入り、その後の発展に対しては眼を見張る物があった。

 これも全て九州沿いに海を挟んで、良質の石炭発掘のお陰で、宇部市、小野田市もこうした石炭で生まれた小都市でもある。

 現在では、東見初、沖の山、長沢、西沖、本山炭坑などと市を背負う企業になっている。

 其の鉱業所も昭和四十二年を転機を迎え、姿を消してしまった。

 その変わり、次を背負う工業地跡には、新たな工場が姿を見せ、海岸沿いを埋め尽くす様に建ち並び始めている。

 宇部市は本州の一番西の端にある。

 下関市の近隣市に当たり、下関駅からやく四十キロの所に市はある。

 また国道二号線、国鉄山陽本線を背景に表側は常に海面、瀬戸内海を眺め、海の自然に囲まれた、海辺の側にあった。

 其処には、何処にでも見られる様な商店街が長く尾を引き、夜とも成れば、多くの人々で賑わっている。


 五月二十四日、
 この日は朝から、時雨が続き、一向にやむ気配がなかった。

 この雨の中を、察して観光地とは無縁の此の地に、何人かの人々に混じって、一人の女が、山陽本線大阪始発の九州博多行きの下り急行列車「つくし号」から、小郡駅の四番ホールに下りていた。

 年の頃二十三、四と思える此の女性は、小雨続きの湿ったホームで、暫く立ったまま回りを見渡していた。

 赤いサングラスを掛け、白のミニスカートと高いハイヒール、長い黒髪が腰の辺りまで伸び、彼女の姿を一相晴れやかな物にしていた。

 左胸には大きな黄色いブローチを付け、どう見ても大きさから云って、硝子なのだろうが、そんな感じさえさせない、雰囲気が彼女にはあった。
 四番ホールから階段を登り乍ら、唯一つ手にしている白いハンドバックを二、三度軽く叩いて登っていった。

 どうやら気合いを入れて居る様だった。


 六番ホール宇部線に現れると、待機していた三両電車の一両車に乗り込み、座席の視線から逃れる斯の様に、顔を窓の外へと向け、時折、腕時計の針を読んでは外の風景を見た。



更新日:2018-01-17 23:18:41

愛すべき彼女たち =( 財宝と二重死体と生きていた顔は…?)