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志保がようやく身体の向きを変えると、新一の髪に手を伸ばす。

「まだ濡れてるわよ」
「すぐに乾くさ」

新一の掌も彼女の首筋へと伸びてくる。

「それで何を怒ってたんだよ」
「怒ってなんかないわよ」

(は? 俺に何度も嫌がらせしてたのにか)

けれど、ここで無理やり彼女の口を開かせたところで志保は本音を語ろうとはしない。
彼女のことは誰よりもどんな男よりも知っているつもりだ。

とぼける志保に新一の指先が彼女の肌を擽っていく。

「ちょっと、キャッ! 止めてよ、バカ」

言葉とは裏腹に志保がクスクスと笑い出す。

そう言えば、服部が来てから彼女と二人きりになったのはこれが初めてだった。

そのまま彼女の首筋に手を添えて唇にキスをしようとすれば、
彼女の両手がまた新一の身体を押し返した。

「ダメよ」
「なんでだよ」
「だって、キスだけじゃ終わらないじゃない? 服部君が来てるのよ」

新一が悩ましげに視線を迷わす。
彼女が嫌なら無理強いするわけにはいかないが……。

「別にキスくらいしたっていいだろう」
「本当にキスだけ?」

「ああ、キスだけ」と新一が頷く。

「キスだけならいいわよ」

志保の方から身体を寄せるようにして顔を近づけると、
彼の唇の端にチュッと小さくキスを送る。

「はい、キスだけね」

(おい、マジか……)

唖然とする新一に志保が楽しそうに笑う。

まるで悪戯に成功した子供みたいに彼女が笑っている。

新一だけが知る志保の無邪気な笑顔。

こんな間近であんな笑みを見せられたら……

(クソッ、可愛い)

「やっぱ無理、我慢できねぇー」
「えー? うそでしょ!? ちょっと待ってよ、工藤君!」
「オメーがわりぃんだぞ」
「はっ? なんでよ! キスだけって……」
「だから、キスだけ」
「あぁあん、もう……工藤くん! んっ、んんんー」

新一が志保の身体に覆いかぶさるようにして唇を奪われていた。

キスだけで終わったかは──

それは恋人たちの秘密だ。

更新日:2022-02-04 01:02:43

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続・哀情恋慕 番外編 【コナンで新一×志保】