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第一章 高校生と小学生、二人の距離は……

江戸川コナンが工藤新一に戻ってから半年が過ぎた。

隣に住んでいながら小学生と高校生では生活のサイクルが全く違う上に、
灰原哀が意識的に工藤新一を避けていたこともあり、
哀が新一の姿を見かけることはほとんどなかった。

この半年、哀と新一の関係はと言えば、たまたま家の前ですれ違い、
『元気にやってるか』と何度か挨拶をかわした程度。

時々、工藤邸を出入りする蘭の姿を見かけたり、
明るく賑やかな蘭の声が博士の家の庭先まで聞こえてくることもあった。
新一と蘭の二人の仲は上手くいっているようだった。

しかし、八月の夏休みを最後に哀が蘭の姿も声も見聞きすることはなくなっていた。

そんな九月のある日、哀が運動会の練習でいつもより帰宅が遅かったせいか、
久しぶりに学校の帰り道に新一とばったり出くわす。

「おい、灰原じゃねーか! 久しぶりだな、元気にやってたか?」

新一は自分よりはるかに低い位置にある哀の頭をぐしゃりと撫でると、
「おめえ、ちいせーな」とからかうように笑った。

コナンの時は哀の方が背が髙かったのだ。

哀は「ふん」と機嫌を損ねたフリをしてそっぽを向く。
新一に触れられて胸が高鳴るのを悟られたくなかった。

彼に出会って嬉しい気持ちを哀は必死に隠す。

あれから半年も経つのにコナンを思う気持ちは一向に冷める気配がない。
ただメガネがないだけで工藤新一は江戸川コナンの面影をたっぷり残している。

「そういやさ、あいつらどうしてる? 歩美も元太も光彦も元気か? 」

「変わらないわよ。毎日こっちが疲れるほど元気ね」

「まあ、あいつら疲れ知らずだからな。
オメーがげんなりしてる姿が目に浮かぶぜ、アハハハッ……。
俺も半年前まではあいつらと同じガキだったんだよなぁ」

どこか遠くを見つめ、新一があの頃を懐かしんでるように見えた。

更新日:2017-08-06 09:45:26

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哀情恋慕 【コナンで新一×志保】