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俺としては一時間でも長く彼女といたいという軽い気持ちで誘っていたから、
いざOKの返事をもらうと逆に悩んでしまう。

キスの先を考えたことがないと言ったら、嘘になるが……。

(こればっかりはな、あいつの気持ちもわからねーのに、
俺だけがその気になってもバカみてーだし、上手くいくもんじゃねーよな)

俺が一人で物思いにふけっていると灰原が尋ねてくる。

「今夜は何が食べたい?」

「…………カレー」

一番簡単で手早くできそうな料理を答えておいた。

「あっ、そうだ! 灰原、忘れてた。オメーに土産だよ」

「なに?」と灰原が一瞬嬉しそうな顔をする。

「ほら、これ、うなぎパイ! 元太に頼まれたからオメーにも……。
オメーもパイは好きだろ?」

うなぎパイを差し出すと、灰原にほんの少しだけ睨まれた。

あははっ、いや、別に夜のお菓子の名文句に魅かれたわけじゃねーから……。

夕食後は俺が借りてあったミステリー映画のDVDを見た。
二人でお土産に買ってきた『夜のお菓子・うなぎパイ』を食べながら。

気づけば、夜も十二時近い。
いくら明日は学校が休みでも一晩中起きてるわけにもいかない。

ここがベッドが一つしかない狭いワンルームだったら事は簡単なのだが、
俺の家は無駄に大きくてゲストルームだけでもいくつかある。

両親の稼ぎで買った家だし、特に文句はないが、
こういう時は困ったりもする。

さあ、寝るかって時になって俺はいちおう彼女に聞いてみた。

「そろそろ、寝るか……。灰原、ゲストルーム使ってもいいぜ」

灰原が意外そうにちょっと驚いた顔をしたのですかさず付け加えた。

「それとも……俺と一緒に寝るか?」

彼女は床に視線を落とすと、小さな声で答えた。

「江戸川君が……そうしたいなら……」

「わかった。部屋で待ってるから」

俺はそれだけ答えるのが精一杯だった。

照れ隠しなのか俯く灰原が可愛くて、
今、彼女にに触れたら俺はどうにかなりそうだった。

更新日:2018-06-17 21:16:13

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