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最初で最後 part 4

タキシードを選びながら、俺は数年ぶりにキッドと会った日のことを思い出していた。

髪も整えてもらい、シルバーグレーのタキシードに着替え終えると、
「もうしばらくここでお待ち下さい」と控え室で待たされる。

遅刻した割には時間が余ったようだ。

さすがにここでは小説を読む気はしない。
手持ち無沙汰でボンヤリしていると、携帯の着信音が鳴り響く。

母さんからだった。

「もしもし、母さんか、どうしたんだよ。この忙しい時に……何か急用か?」

『キャー、懐かしい新ちゃんの声だわ。新ちゃん、ホントに元に戻ったのね』

母さんの甲高い声が耳に響いてくる。

(あぁ、そうか、俺、声まで変わってるんだなぁ)

母さんに言われて初めて気づく。
コナンの俺はまだ声変わりをしていない。
元太などは小学校の頃から野太い声に変わっていたし、
光彦も最近声変わりした。

(こんなのは競うもんじゃねーしよ……
まあ、男としては目覚めってから、あははっ)

『ねえねえ、優作、本物の新ちゃんの声よ』

電話の向こうで母さんが興奮した声で父さんに話しかけている。

(なんだ、父さんも一緒にいるのかー)

『もしもし、新一か?』

「ああ、父さん」

母さんと違って父さんと話す時はわずかながら背筋が伸びて緊張する。

『有希子に聞いたぞ。これからお前、彼女と結婚式を挙げるそうじゃないか』

「ごめんよ、父さん。何も相談しないで決めちまってさ……」

『いや、それは構わんさ……お前の人生だ、私がとやかく言うこともあるまい。
しかしながら、新一、結婚となるとお前一人の問題じゃないんだぞ。
お前にその覚悟はできているのかい?』

更新日:2018-06-19 23:58:39

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