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「工藤君、私ね、米花町へ帰りたいの。博士にも会いたい……。
あの子たちの成長も見守りたいの。だって、初めてできた友達だから」

灰原の顔が辛そうに歪んで今にも泣きだしそうだ。

「いつになるかわからないけど、貴方や博士、それから……
少年探偵団のあの子たちとまたあの街で一緒に暮らしたい。
だから、私は灰原哀として生きていくわ。
そして、必ず……帰るから……その時まで…………」

彼女の話を聞き終える前に俺の足が堪らず動く。
俺は再び灰原を抱きしめていた。

「もういい、言わなくていいよ。
俺、オメーの気持ち、誰よりもわかってるつもりだから」

この三年あまり、誰よりも一番近い場所で彼女を見守ってきた。

「……工藤く……ん」

彼女の身体が小刻みに震えている。
灰原の手がおずおずと俺の背に回ると、シャツを握り締めた。

胸が苦しくて痛いほど彼女への感情が沸き上がってくる。

このままずっと抱きしめあったままでいられたら───
どんなに幸せだろうか。

俺は抱きしめる腕にさらに力を込める。
今は彼女を離したくなかった。

「待ってるからよ……。灰原が帰ってくるのを待ってる。
だから、必ず帰ってこいよ」

『俺の隣に──』という言葉は飲み込んだまま腕を緩めると、
彼女の震える唇に、俺のありったけの思いを込めて……キスをした。

『約束したぜ、灰原』

灰原との初めての口づけは涙の味がしてしょっぱかった。

更新日:2017-07-31 00:13:32

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