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灰原哀は組織にいた人間だ。
毒薬を作成したのは哀であり、例え強制されたものであっても……
その事実を消すことができない。

知らなかったと言えば、哀が作成した事実が消えてなくなるものではない。

コナンも十分にそのことは理解している。

その一方で、哀が自分が作った毒薬のせいで人が死に、
コナンを幼児化させしまったことにも一人で苦しみ、
自分自身を責め続けていることを痛いほど知っていた。

哀は罰だといって幸せになることをずっと拒否している。

罪と罰は常に同居している。
罪を犯せば、罰を受ける──それは当然のことだとコナンも思っている。

(だから、俺はどんな事件現場でも常に真実を求めて犯人を追い続けている)

それでもコナンは目の前の幸せを拒絶することは────
とても悲しい考えだと思わずにはいられない。

途中で黙り込むコナンに、優作が慰めるかのように語りかける。

「まだ哀君の処遇については何も決まっていないのだから……
新一、悪い方向にばかり考えるものではないよ。
FBIの管理下にいる方が哀君の身の安全も保障されるのだからね」

「新ちゃん、今はただ哀ちゃんが早く目を覚ますように願いましょう」

有希子がコナンの頭を優しく撫でた。

「……父さん……頼みがあるんだ。
俺が寝ていた間の新聞を全部集めてくれ! 
できれば、アメリカやイギリスの海外の新聞も集めて欲しい。
どんな小さな記事でもいいから……
黒の組織の事件が載ってる記事をすべて読みたい。
何があったか知っておきたいんだ」

コナンは優作にそう頼むと、そっと目を閉じた。

もしかしたら、彼女の役に立つ日が来るかもしれないから────
すべてを知っておきたい。

更新日:2017-07-30 23:52:02

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