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その日は京都の医大附属病院にて、社会人入試を受験する手筈となっている、社会人の茶々丸。

実家の広島から京都まで自動車で移動し、近隣のホテルにチェックインし、しっかり休眠をとり、朝飯を摂取し、顔を洗って髭を剃り、ワックスで前髪を七三に纏め、シーブリーズで消臭し、持ってきた一張羅のスーツを羽織った所で、胸部に目立つ白と黒のコントラストが、鏡越しに見ている自分でさえ、異様なまでの不自然さに愕然とする茶々丸。

この様な不恰好な服装のまま来室し、医大の面接官がどう思うかをイメージする茶々丸。

おそらく、99%の確立で、手を払い除けるジェスチャーをした後に、突き立てた親指を真下に下ろす面接官を想像するが、事情を説明すれば、1%の確立で、寛容な先生方が多目にみてくれる可能性もある、と楽観する茶々丸。

そう茶々丸は期待をするが、そもそも社会人としてそれでいいのか、と露骨な考えを取り止め、慌てて支度をする茶々丸。

シャープペンシルと消しゴム、定規と修正液の入った筆記用具入れと、受験票を鞄に入れ、革靴を履き、シングルルームを飛び出して、エレベーターへと疾走する茶々丸。

エレベーターに着き、フロントへと降りる間に、対抗策を考える茶々丸。

折角地元で拵えた、茶々丸お気に入りの、赤と紫のグラデーションのネクタイが、今も実家の箪笥で眠っていると思うと、自分への怒りが彷彿とする茶々丸。

腕時計を横目に、午前7時過ぎである事を確認すると、試験開始の8時までに、ネクタイを売っている店が開いているのか、と疑う茶々丸。

少なくともスーパーやデパートの開店時刻は、少なくとも9時以降だと考察し、一階に到着しても尚、考えれば考える程、焦燥する茶々丸を、遠目で見据えるフロントのホテルマン。

試験開始まで、あと60分の茶々丸であった……。

「(あの人、ネクタイは?)」

更新日:2015-01-23 21:21:18

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ある日、茶々丸はネクタイを忘れた。