• 1 / 5 ページ

魔法の呪文

「お兄ちゃんに言いつけるよ」
 大丸さんが口にする、俺の体を動けなくする魔法の呪文。
 好きな食べ物は?
 好きな事は?
 暇なとき何してるの?
 松坂屋さんへの他愛のない質問。
 そんなに聞いちゃ駄目なことなの?
 知らないから知りたい、ただそれだけなのに。
 好きな人の事に興味を持つのは普通じゃないの?
 大丸さんも松坂屋さんも俺の事、全然知ろうとしないのはどうして?
 疑問ばかりがぐるぐる俺の中を駆け巡る。
 折角家族になったのに、互いの事は全然わからない。兄ちゃん達といた時はこんなことなかったのに。
 一つ屋根の下、間借りしているような疎外感が常につきまとう。
 寂しい、寂しいよ。
 沈黙や静寂は怖い。寂しさを増幅させるから。
 会話が途切れぬよう矢継ぎ早に質問ぶつける程に松坂屋さんは困惑し、大丸さんの機嫌は悪くなる。
「お兄ちゃんに言いつけるよ」
「お兄ちゃんに言いつけるよ」
「お兄ちゃんに言いつけるよ」
 咎めるように繰り返される呪文にどうしたらいいかわからない。苛立ちが募り、不満が体内に充満していく。ゆっくり、ゆっくり、まるで風船が膨らんでいくかのように。
「お兄ちゃんに言いつけるよ」
 松坂屋さんにそう言われた時、俺の中でパンッと乾いた破裂音が聞こえた。

                *
                *
                *

 明かりが煌々とついた大丸と松坂屋の寝室。そこに裸体のまま後ろ手に縛られた松坂屋が横たわっていた。
「パルコ君……なんで?」
 冷めた目で自分を見下ろすパルコに、松坂屋は声を震わせて問う。が、パルコは何も答えず、気だるげに身につけている衣服を脱ぎ捨てていく。衣服の下からは若々しくしなやかな肉体が露わになる。
 パルコが松坂屋に覆いかぶさるとギシッとベッドが軋んだ。耳元でパルコがそっと囁く。
「暴れないって約束するなら解いてあげる」
「パルコ君!」
「…その様子じゃ無理みたいだね」
 まあ予想通りだけど、と動じた様子もなく松坂屋の胸元に手を這わせる。
「大丈夫、俺の大丸さんみたいにでかくないけど、その分回数できるから。松坂屋さんをちゃんと満足させてあげられるよ」
 パルコは少し体を起こし、両胸の淡く色づく乳首をそっと撫で始める。
「いやだっ!もうしないって約束しただろ!」
 以前、一度だけ松坂屋さんを抱いた時ひどく大丸さんに怒られた。俺と松坂屋さんは親子みたいなものだからセックスはしないんだ、と。松坂屋さんの事可愛いって思ったし、大好きだったからすごく残念だったけど、別にセックスできなくてもいいってその時は思った。だってちゃんと家族になってくれるって言うから。
 でも……じゃあ松坂屋さんや大丸さんの言う家族ってなに?俺は二人の好きな物さえ満足に知らないし、二人も俺の事なんて知ろうともしない。こんなの家族って言わない。
 すりすりと執拗に撫でていると、松坂屋さんの肌が粟立ち、乳首はぴんと張り詰め自己主張をし始める。
「固くなってきたね。気持ち良くなってきた?」
「やめるんだ!でないと……あうっ!」
 ぎゅっと力いっぱい乳首を摘んでひねりあげると、松坂屋は痛そうに顔を歪め、呻き声を上げる。
「でないと…何?」
 聞かなくったって次の言葉はわかってる。ここ数カ月、大丸さんにずっと言われ続けてきた呪文。
「お兄ちゃんに言いつけるよ……」
 語尾が消え入りながらも怯えた顔をして松坂屋が口を開く。
「言えば?」
 凶暴な感情が胸の内を満たしていく。自分の口元が緩むのがわかった。初めて知った、人間ってあんまりにもムカつくと逆に笑っちゃうんだ。
 「パ…ルコ君?」
「そんな顔しないでよ」
 青い顔をする松坂屋の乳首を優しく摘んで捏ね、もう一方は口に含んでチロチロと舌で舐めてやるとぴくぴくと松坂屋の体が震えだす。
「痛くされてじんじんしてる乳首を優しく舐められるの好きでしょ?松坂屋さん」
「好きじゃな……っ!」
 きゅっと強く吸い上げればびくり、とのけぞる。
「嘘。いっつも大丸さんにされて気持ちいって喜んでるじゃん。松坂屋さん知ってる?寝室の壁、薄くないけどエッチしてる時の松坂屋さんの声っておっきいから俺の部屋に聞こえてるんだよ?痛い痛いって騒いだ後、あんあん言ってるじゃん。見てよ、胸しか触ってないのに松坂屋さんの勃ってきてるよ。でもすぐに触んない方がいいんだよね?今日はおっぱいだけで一回イッてみる?」

更新日:2015-01-12 15:18:31

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

魔法の呪文【百貨店擬人化二次】 R-18