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人助け
90.人助け①
各チームのリーダーだけ集められた。ダンの横に、見知らぬ男が二人座っている。課黒人のようだ。
ダンが立ち上がった。
「では、ゲーム内容を説明する」
昂胤は若干緊張した。
「紹介する。こっちがチャン・ソンヒョン。隣がワン・ヨンスだ」
二人が頭を下げた。
ソンヒョンと呼ばれたほうは、どこにでもいそうな小太りのサラリーマンといったところ。ワン・ヨンスのほうは、服の上からでも鍛え上げた肉体だとわかる。目つきの鋭い男だった。
「ゲーム内容は簡単だ。この二人を支援し、目標をクリアする。それだけだ」
ダンが皆を見回し、にっこり笑って座った。
「ダン、その二人は何なんだよ」
リーダーAが言った。
「そうだぜ。話しが見えねえぜ」
リーダーB言った。
「じゃ、直接話してもらおう」
ダンが言ったので、サラリーマンのほうが立ち上がった。それを見て、もう一人も立った。
「私は、北朝鮮の統戦部に籍を置くチャン・ソンヒョンという者です。彼は、神龍隊第4大隊長のワン・ヨンスです」
ソンヒョンは、なまりのある英語で、ヨンスを紹介した。やはり韓国人だった。北と言ったのが昂胤は気になった。
「私たちの国は、今とても悲惨なことになっています。その現状は、世界に報道されているより酷いものです。毎年、何万人と餓死者が出ていることは報道されていません。このままでは国がなくなってしまうと、私たちは危惧しています」
ソンヒョンは、ここでいったん言葉を切った。ヨンスは目を伏せている。ダンは、皆を観察しているようだ。
他の者は、ソンヒョンの次の言葉を待っている。
「私たちは、世直しをするしかないところにきています。そこで、世直し党を結成しました。今、党員を集めていますが、いくら集めたところで、首領の軍には追い付きません。それに、私たちはクーデター未経験者です。チャンスは一度きり。絶対に成功させなければならないのです。
そこで、プロであるみなさんのお力をお借りしたいのです。自分たちのことは自分たちで解決しないといけないとわかっています。ですが、背に腹は代えられないのです」
ソンヒョンは、首領主義思想が徹底された国の現状を説明した。情報操作をして自国民を偽っている自分の仕事についても説明した。国民が常に監視されていて一切の自由がないこと、高級官僚ですら相互監視態勢の下におかれていることなど北朝鮮の実情を、包み隠さずたんたんと訴えた。
最後まで誰も口を挟まず聴いていた。
長い話が終わった。
ソンヒョンは深々と頭を下げた。一拍遅れてヨンス下げた。
「どうだい。話が見えただろ」
何でもないことのように、ダンが軽い口調で言った。
「バーレーン王国第2弾ってわけか!」
リーダーCが笑いながら言った。Cの言葉につられて他のリーダーも笑った。ソンヒョンの顔がこわばった。
バーレーンの件は、やはりダンたちの仕業だったのか。もしかして、予行演習だったのか、と昂胤は思った。
「だけどよ、今度はそんなに甘くねえぜ。こちらさんは軍人で固めたお国だからよ」
別のリーダーが言った。
「ちょっと待ってくれ。ゲームをするって言っていたけど、このことだったのか」
昂胤が訊いた。
「ああ、そうだぜ。おもしろそうだろ」
ダンが答えた。
「じゃ、なぜ最初から言わなかった?」
「最初からわかっていたんじゃ、おもしろくないだろ。俺たちのゲームが役に立つってんだから、日本のコトワザにあるじゃないか。一石二鳥ってやつだぜ」
ダンが言ったが、昂胤はまだ何か納得いかなかった。しかし、それ以上追及しなかった。
各チームのリーダーだけ集められた。ダンの横に、見知らぬ男が二人座っている。課黒人のようだ。
ダンが立ち上がった。
「では、ゲーム内容を説明する」
昂胤は若干緊張した。
「紹介する。こっちがチャン・ソンヒョン。隣がワン・ヨンスだ」
二人が頭を下げた。
ソンヒョンと呼ばれたほうは、どこにでもいそうな小太りのサラリーマンといったところ。ワン・ヨンスのほうは、服の上からでも鍛え上げた肉体だとわかる。目つきの鋭い男だった。
「ゲーム内容は簡単だ。この二人を支援し、目標をクリアする。それだけだ」
ダンが皆を見回し、にっこり笑って座った。
「ダン、その二人は何なんだよ」
リーダーAが言った。
「そうだぜ。話しが見えねえぜ」
リーダーB言った。
「じゃ、直接話してもらおう」
ダンが言ったので、サラリーマンのほうが立ち上がった。それを見て、もう一人も立った。
「私は、北朝鮮の統戦部に籍を置くチャン・ソンヒョンという者です。彼は、神龍隊第4大隊長のワン・ヨンスです」
ソンヒョンは、なまりのある英語で、ヨンスを紹介した。やはり韓国人だった。北と言ったのが昂胤は気になった。
「私たちの国は、今とても悲惨なことになっています。その現状は、世界に報道されているより酷いものです。毎年、何万人と餓死者が出ていることは報道されていません。このままでは国がなくなってしまうと、私たちは危惧しています」
ソンヒョンは、ここでいったん言葉を切った。ヨンスは目を伏せている。ダンは、皆を観察しているようだ。
他の者は、ソンヒョンの次の言葉を待っている。
「私たちは、世直しをするしかないところにきています。そこで、世直し党を結成しました。今、党員を集めていますが、いくら集めたところで、首領の軍には追い付きません。それに、私たちはクーデター未経験者です。チャンスは一度きり。絶対に成功させなければならないのです。
そこで、プロであるみなさんのお力をお借りしたいのです。自分たちのことは自分たちで解決しないといけないとわかっています。ですが、背に腹は代えられないのです」
ソンヒョンは、首領主義思想が徹底された国の現状を説明した。情報操作をして自国民を偽っている自分の仕事についても説明した。国民が常に監視されていて一切の自由がないこと、高級官僚ですら相互監視態勢の下におかれていることなど北朝鮮の実情を、包み隠さずたんたんと訴えた。
最後まで誰も口を挟まず聴いていた。
長い話が終わった。
ソンヒョンは深々と頭を下げた。一拍遅れてヨンス下げた。
「どうだい。話が見えただろ」
何でもないことのように、ダンが軽い口調で言った。
「バーレーン王国第2弾ってわけか!」
リーダーCが笑いながら言った。Cの言葉につられて他のリーダーも笑った。ソンヒョンの顔がこわばった。
バーレーンの件は、やはりダンたちの仕業だったのか。もしかして、予行演習だったのか、と昂胤は思った。
「だけどよ、今度はそんなに甘くねえぜ。こちらさんは軍人で固めたお国だからよ」
別のリーダーが言った。
「ちょっと待ってくれ。ゲームをするって言っていたけど、このことだったのか」
昂胤が訊いた。
「ああ、そうだぜ。おもしろそうだろ」
ダンが答えた。
「じゃ、なぜ最初から言わなかった?」
「最初からわかっていたんじゃ、おもしろくないだろ。俺たちのゲームが役に立つってんだから、日本のコトワザにあるじゃないか。一石二鳥ってやつだぜ」
ダンが言ったが、昂胤はまだ何か納得いかなかった。しかし、それ以上追及しなかった。
更新日:2019-02-16 15:37:46