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56.X地点④

 昴胤が二人に近づいた。ジョッシュは、セオに馬乗りになってセオを殴った。

「もういいだろう」

 ジョッシュの肩に手をかけて昴胤が言った。昴胤が二人から離れたらジョッシュがくずおれてセオが立ち上がった。セオは、ジョッシュがなぜ倒れたのかわかっていなかったが、ガッツポーズをして吠えたてた。

 皆は、セオが下から突き上げたパンチが決まったのだろうくらいに思っていたが、昴胤のチームメートにはわかっていた。二人を止めるため、昴胤が出た。どうしたのかまでは見えなかったが、ジョッシュを眠らせたのは昴胤だ。

 セオが間違って針金を入れるなんてあり得ない。ジョッシュが因縁をつけたのだ。セオは偽箱以来憎まれていた。その仕返しだろう。

「マイト。連れて行ってくれ」

 昴胤がマイトに言った。

「おい、連れて行け」

 マイトが言って、ジョッシュが連れていかれた。

「コーイン。悪かったな」

 マイトが素直に謝った。

「いいさ。だがな、セオは針金なんか入れるヤツじゃないぜ」

 昴胤が言った。

「ああ、そうだろうな。セオ、悪かった。許してやってくれ」

 マイトが、セオにも謝った。

「もういいっすよ。そんかわり、あいつにゃ二度と食わさねえ」

「わかったよセオ。メシ、うまかったぜ。俺にはまた食わせてくれるよな」

 マイトがセオに言った。


 3日後。

 最後のチームがそろうのを待っていたかのようにダンが合流した。

 初めて見る男を二人連れていた。東洋人だった。

 ダンは、各チームのリーダーを集めた。

「もう気づいていると思うが、訓練は終わりだ。長い間待たせたが、いよいよゲーム開始だ」

 にっこり笑ってダンが言った。そして、後ろに立っている二人の男を見て言った。

「この二人が、ゲームのジョーカーだ。こっちがチャン・ソンヒョン、こっちがワン・ヨンスだ」

 二人はダンの両脇に座った。

「最初に言っておく。ゲーム内容を聞いたらもう降りられない。降りるなら、今しかない」

 ダンはここで言葉を切って、ダンスマイルで皆を見た。

 誰も何も言わず、ダンを見つめている。今さら降りる者がいるはずもないが、ダンはじっと待っていた。

 長い沈黙だった。

「誰も降りないということで確定する。もう降りることは許さん!」

 ダンの表情が変わっていた。



更新日:2015-05-15 17:22:31

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《田川昂胤(こういん)探偵事務所❷「ウォンジャポクタン」》