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46.マイトの執念⑫

「ボス! セオが縛られている!」

 セオの寝ていた場所に行くと、縛られて身動きできなくなったセオがいた。

「すまない。油断した」

 さるぐつわとロープを取ってもらってセオが言った。

「じゃ、品物、持ってかれたのか!」

 ゴードンが言った。

「ああ。持っていったぜ」

「何だと!」

 ロドニー。

「ひきょうな!」

 周がうめいた。

「予定どおりだな」

 セオが言った。

「予定どおりとは、どういうことです?」

 周が訊いた。

「ボスの読みどおりってことよ」

 セオがにんまり笑って答えた。

「つまりだな」

 セオが説明を始めた。

 マイトは決してあきらめない。ルールは何でも有りだからだ。必ず狙ってくる。だから、セオがダミーをこしらえておいたのだ。

「マイトはそれを持って行ったというわけさ」

 得意気にセオが言った。

「じゃ、マイトは偽物を持って行ったのか」

 皆は破顔した。

「でかしたじゃねえか、セオ」

 ゴードンがセオに言った。

「俺は、ボスに言われたとおりやっただけさ」

 セオが昴胤の顔を見て言った。

「さあ、朝めしを食ったら出発するぞ」

 昴胤が言った。

 マイトは得意気にダンに報告するだろう。偽物とは知らずに。それを見た瞬間、ダンは何があったのか、わかる。

 昴胤たちは、それからは襲撃を受けることなくキャンプ地に戻った。

 昂胤の予想どおりだったらしく、ダンは昂胤たちに7日間の休暇をくれた。

 そして、他のチームは、ダンのチームも含めて鍛えなおすと言った。あとで聞いた話しだが、次に戻ったのは3日後、その後は7日遅れ。10日遅れのチームもあったようだ。マイトに対しては叱責がことのほか厳しかったようだ。

 休暇をもらった昂胤たちは、それぞれ好きに過ごすことにした。ゴードンはわからないが、ダウとセオとロドニーはソウルに遊びに行くと言う。

 昂胤と雄大が帰国するときいて、日本が初めてというニックと1年ほど日本に住んだことがあるという周が連れて行ってくれと言うので、連れて帰ることにした。



更新日:2016-07-07 22:01:51

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《田川昂胤(こういん)探偵事務所❷「ウォンジャポクタン」》