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2.恩師来日②
夕実は秘書検定1級を持つ優秀な秘書だ。
切れ長の目、長くて黒いまつげが上を向いてカールし、大きな瞳をさらに大きく見せている。鼻は高く、下唇は厚くめくれたように見える。肩下30cmの茶髪が内側にカールし、見方によってはきつく見える顔の印象を優しくしている。
身長172cm。体重56kg。バスト88cm、ウエスト54cm、ヒップ86cm。グラビア女優顔負けの容姿は、モデルとしても充分通用する。
大学生のとき昂胤の事務所に入り浸る夕実を突き放すため、秘書検定試験に受からなければ出入り禁止だと申し渡したところ、受かれば雇ってくれるのかと言われOKした。約束ですよ、と念を圧された。
受かるはずがないと思っていた昂胤の思惑は、外れた。難なく合格してしまったのだ。約束した以上断れなくなった。
秘書検定だけじゃなく、夕実は英検1級も持っている。昂胤の事務所では、たいした仕事はないのだ。だから、この事務所ではもったいないと昂胤は思っていた。どの大企業でも喜んで雇ってくれるから行くようにいくら言っても、約束だからと言って夕実はここを動かない。
明後日。
空港に着いた教官を、まっすぐ昴胤の事務所に案内した。教官がそうしてくれと言ったからだ。事務所に着いたら詳しく話すからと。
アンダーソンは、長旅の疲れをまったく感じさせなかった。
応接室に教官を通したら、夕実がすぐコーヒーを持ってきた。
「教官。俺の助手です。夕実、こちらが教官だ」
昂胤は、夕実を教官に紹介した。
「いつも大変お世話になっております。お噂は所長からかねがねうかがっております。私、葵 夕実と申します。お見知りおきのほどを、どうぞよろしくお願い致します」
昴胤がおどろくほど流暢な英語で、夕実が挨拶をした。
「初めまして。私は、アンダーソン。夕実、よろしく」
アンダーソンが、手を出した。夕実がその手の先を軽く握った。190cmを超える巨漢だが、女性にはいたって優しい。スーツの上からでも鍛え抜かれた体であることがわかる。目は薄緑で髪はゴールド、どちらかといえば愛嬌のある顔だちだ。
「コーイン、つきあってるのか」
夕実が出て行くのを待って、アンダーソンが訊いた。
「違いますよ。恩人の娘さんです」
あわてて昂胤が説明した。
「彼女の目は、そうは言ってなかったぞ」
からかうような目で教官が言った。
「Oh No! 誤解しないでくださいよ、教官」
「まあいい。仕事は順調か」
珍しそうにオフィスを眺めながら、教官が言った。
夕実がいるので掃除は行き届いており、何か所かに花が活けてある。
「ご覧のとおり暇ですよ」
パーテーションで仕切ってあるだけだから、夕実が忙しそうにしているのが伝わってくる。特に今、何も急いですることはないはずだ。アンダーソンに見栄をはっているのか。
「さっそくだがコーイン。おまえに頼みがある」
真剣な眼差しで、いきなり教官が切り出した。
「はい。言ってください」
昂胤は、目を見て言った。
夕実は秘書検定1級を持つ優秀な秘書だ。
切れ長の目、長くて黒いまつげが上を向いてカールし、大きな瞳をさらに大きく見せている。鼻は高く、下唇は厚くめくれたように見える。肩下30cmの茶髪が内側にカールし、見方によってはきつく見える顔の印象を優しくしている。
身長172cm。体重56kg。バスト88cm、ウエスト54cm、ヒップ86cm。グラビア女優顔負けの容姿は、モデルとしても充分通用する。
大学生のとき昂胤の事務所に入り浸る夕実を突き放すため、秘書検定試験に受からなければ出入り禁止だと申し渡したところ、受かれば雇ってくれるのかと言われOKした。約束ですよ、と念を圧された。
受かるはずがないと思っていた昂胤の思惑は、外れた。難なく合格してしまったのだ。約束した以上断れなくなった。
秘書検定だけじゃなく、夕実は英検1級も持っている。昂胤の事務所では、たいした仕事はないのだ。だから、この事務所ではもったいないと昂胤は思っていた。どの大企業でも喜んで雇ってくれるから行くようにいくら言っても、約束だからと言って夕実はここを動かない。
明後日。
空港に着いた教官を、まっすぐ昴胤の事務所に案内した。教官がそうしてくれと言ったからだ。事務所に着いたら詳しく話すからと。
アンダーソンは、長旅の疲れをまったく感じさせなかった。
応接室に教官を通したら、夕実がすぐコーヒーを持ってきた。
「教官。俺の助手です。夕実、こちらが教官だ」
昂胤は、夕実を教官に紹介した。
「いつも大変お世話になっております。お噂は所長からかねがねうかがっております。私、葵 夕実と申します。お見知りおきのほどを、どうぞよろしくお願い致します」
昴胤がおどろくほど流暢な英語で、夕実が挨拶をした。
「初めまして。私は、アンダーソン。夕実、よろしく」
アンダーソンが、手を出した。夕実がその手の先を軽く握った。190cmを超える巨漢だが、女性にはいたって優しい。スーツの上からでも鍛え抜かれた体であることがわかる。目は薄緑で髪はゴールド、どちらかといえば愛嬌のある顔だちだ。
「コーイン、つきあってるのか」
夕実が出て行くのを待って、アンダーソンが訊いた。
「違いますよ。恩人の娘さんです」
あわてて昂胤が説明した。
「彼女の目は、そうは言ってなかったぞ」
からかうような目で教官が言った。
「Oh No! 誤解しないでくださいよ、教官」
「まあいい。仕事は順調か」
珍しそうにオフィスを眺めながら、教官が言った。
夕実がいるので掃除は行き届いており、何か所かに花が活けてある。
「ご覧のとおり暇ですよ」
パーテーションで仕切ってあるだけだから、夕実が忙しそうにしているのが伝わってくる。特に今、何も急いですることはないはずだ。アンダーソンに見栄をはっているのか。
「さっそくだがコーイン。おまえに頼みがある」
真剣な眼差しで、いきなり教官が切り出した。
「はい。言ってください」
昂胤は、目を見て言った。
更新日:2017-05-14 12:04:07