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23.博多⑫
「まだ、弱い」
昂胤は、そう言いながら、三代目を見た。
「三代目がさっき告白した内容は、ここに全部入っている。下手なことしたら、これが警察にいくことになる。三代目の歳で刑務所暮らしはつらいぜ」
昂胤がデジタルレコーダを出して、再生した。三代目の告白が、綺麗に録音されていた。
「これは、菅原さんに預けておく。三代目、変な気を起こさないことだ」
昂胤は、レコーダーを菅原に渡しながら、三代目を見て言った。三代目が昂胤を見返したが、その目に力はなかった。
「田川さん、さすがです。いつの間にこんなものを…」
「探偵の必須アイテムですよ、菅原さん」
昂胤は、笑った。そして、三代目の腕をつかんで立たせて言った。
「三代目。さ、行こうか」
「ど、どこに行くと?」
三代目の問いには答えず、菅原に一礼して、三代目を連れて昂胤は部屋を出ようとした。
「田川さん、三代目をどこへ?」
菅原が訊いた。
「俺に、任せてくれませんか」
昂胤が言うと、昂胤の目をじっと見つめ、間をおいて菅原の口から言葉が押し出された。
「そうですか。わかりました。では、連れて行ってください」
そのとき三代目があわてて言った。
「だ、代行っ! アタキを連れて行かせるやなか!」
「三代目は、俺たちと行くところがあるじゃねえか」
雄大が言って、強引に腕を引っ張った。菅原に軽く頭を下げ、昂胤と雄大は、いやがる三代目を無理に連れ出した。
置いて帰ったら、血の気の多い若い衆が間違いを起こしかねない。
結局、昴胤は、三代目を自宅に連れて帰った。三代目は、不思議そうな顔をして、昂胤と雄大を見た。
わけがわからないという顔だ。
「なして?」
「またテキヤグループに手を出したら、こんどこそ玄海灘だ。覚悟しておけ」
「わかっとーと、言われんでん」
三代目が、神妙な顔をして言った。
子分たちがいきりたっていたが、三代目に一括されて静かになった。代貸の末次は、右手を首からつっていた。昴胤を睨んでいたが、目を合わせようとはしなかった。
車を返したので、表通りに出てタクシーを拾った。空港まで、と行き先を告げたら、雄大が、「コーインさん、もう帰るんすか」と、言った。あまりにもあっけなく終わったので、何だか物足りない気がしたのだろう。
「あたりまえだろ。温泉めぐりでもしたいのか」
「いえ。そういうわけでは----。あれでよかったのかなぁと思って」
「心配か」
「俺たちがいなくなったら、また始めるんじゃないっすか」
「ヤツもバカじゃない。念書をとられて、しかも自白を押さえられてるんだ。何もできないさ」
「そうっすよね」
タクシーの中で孝三に電話した。
頼まれたことは一応終わったのでこれから東京に戻る、詳細はまた後日、と報告した。孝三は、感謝の言葉をくどくど言ったあと、お願いがあると言い出した。
「まだ、弱い」
昂胤は、そう言いながら、三代目を見た。
「三代目がさっき告白した内容は、ここに全部入っている。下手なことしたら、これが警察にいくことになる。三代目の歳で刑務所暮らしはつらいぜ」
昂胤がデジタルレコーダを出して、再生した。三代目の告白が、綺麗に録音されていた。
「これは、菅原さんに預けておく。三代目、変な気を起こさないことだ」
昂胤は、レコーダーを菅原に渡しながら、三代目を見て言った。三代目が昂胤を見返したが、その目に力はなかった。
「田川さん、さすがです。いつの間にこんなものを…」
「探偵の必須アイテムですよ、菅原さん」
昂胤は、笑った。そして、三代目の腕をつかんで立たせて言った。
「三代目。さ、行こうか」
「ど、どこに行くと?」
三代目の問いには答えず、菅原に一礼して、三代目を連れて昂胤は部屋を出ようとした。
「田川さん、三代目をどこへ?」
菅原が訊いた。
「俺に、任せてくれませんか」
昂胤が言うと、昂胤の目をじっと見つめ、間をおいて菅原の口から言葉が押し出された。
「そうですか。わかりました。では、連れて行ってください」
そのとき三代目があわてて言った。
「だ、代行っ! アタキを連れて行かせるやなか!」
「三代目は、俺たちと行くところがあるじゃねえか」
雄大が言って、強引に腕を引っ張った。菅原に軽く頭を下げ、昂胤と雄大は、いやがる三代目を無理に連れ出した。
置いて帰ったら、血の気の多い若い衆が間違いを起こしかねない。
結局、昴胤は、三代目を自宅に連れて帰った。三代目は、不思議そうな顔をして、昂胤と雄大を見た。
わけがわからないという顔だ。
「なして?」
「またテキヤグループに手を出したら、こんどこそ玄海灘だ。覚悟しておけ」
「わかっとーと、言われんでん」
三代目が、神妙な顔をして言った。
子分たちがいきりたっていたが、三代目に一括されて静かになった。代貸の末次は、右手を首からつっていた。昴胤を睨んでいたが、目を合わせようとはしなかった。
車を返したので、表通りに出てタクシーを拾った。空港まで、と行き先を告げたら、雄大が、「コーインさん、もう帰るんすか」と、言った。あまりにもあっけなく終わったので、何だか物足りない気がしたのだろう。
「あたりまえだろ。温泉めぐりでもしたいのか」
「いえ。そういうわけでは----。あれでよかったのかなぁと思って」
「心配か」
「俺たちがいなくなったら、また始めるんじゃないっすか」
「ヤツもバカじゃない。念書をとられて、しかも自白を押さえられてるんだ。何もできないさ」
「そうっすよね」
タクシーの中で孝三に電話した。
頼まれたことは一応終わったのでこれから東京に戻る、詳細はまた後日、と報告した。孝三は、感謝の言葉をくどくど言ったあと、お願いがあると言い出した。
更新日:2015-04-10 17:22:47