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戦争と平和はなお遠い 中篇
溜まっていた血を一気に吐き出すあたし。全く一瞬でブッ刺されるから大変だったわ、インパクトの寸前でスイッチするのは。その間僅かコンマ一秒の出来事なんだから。
「足がふらついてるぞ、赤羽涼香」
地滑であたしの周りを舐め回すロディ。
「これも龍神剣の足取りよ」と誤魔化すあたしは更に言葉を続ける。「あなたの動きは段々読めてきたわ」
「どうかしら?」んん? 背後に回ったはずなのに正面に気配がする。「余所見してるの?」
危ないわね。この女ったら、また奇妙な動きで錯覚させるわね。多分、新しい歩方で気配察知を誤らせたわね。陽炎でもないし、地滑でもない。さっきの迅雷でもない。第四の歩方……「水鏡を躱すとは中々」
「水鏡……水の鏡って意味? つまり実と虚を切り離す事で前に居ると見せかけて背後から攻撃する為の歩方なのね」
「それ以上は種明かしに成る」足音が変わった! また歩方を変えてきたわね! 「露舞流の極意を受けよ、赤羽涼香!」
二度目は見切る……迅雷による一瞬の攻撃をほぼ紙一重で掠るあたし。左腕に切り傷が出来ちゃったわ、後でその数倍返してやるわ! そんな感じであたしは四つの歩方を巧みに使いこなすロディによる槍捌きに翻弄されながらもあいつの動きを読んでゆく。
そう、陽炎の時は突きによる攻撃は多彩と成る。でも水鏡の時は突きは単調。地滑の場合は歩方を出した後に足を一瞬止める。迅雷だと急所を狙うように突く。まだまだ詰めが甘いわね、ロディ・ジェイドムーン。
「チイ、仕方ない! 奥義を以てお前を殺す!」
「もうあなたの動きは……」「奥義は見切れまい!」って無数に分身した--いえ、あたしは囲まれたわ!
逃げ場所がない! いえ、あるにはあるけどそこへ突っ込んで良いのかしら? そう、真っ直ぐ飛んで避けるという逃げ場所に。あたしは考える……考える。いえ、まずいわこの奥義! 空中へ逃げれば更なる追撃が待ってる! そうあたしの勘が警告する! なのであたしは真っ直ぐロディに向かうように右足を踏みつける!
「悪手だ、百鬼夜行の前では……」「更なる追撃よりもマシでしょ!」踏んだと同時に素速く左足を前に向かって踏みつけ更に……覇斬撃で正面突破を図る--そう、決死の突撃斬りで!
覇斬撃はあたしの左脇腹に刺さる事で止めてしまうけど、封じたわ--そして首を刎ねさせて貰う!
そう、一瞬だったわ! この一瞬にあたしは懸けた……でも気付いたら壊される事に--あたしの彷徨刀が!
「何も突きだけが露舞流じゃない!」
咄嗟に距離を取るあたしだったが、ショックを隠しきれない。今まで世話に成った刀が壊され、先端が歯のように成るなんて。刃渡りは脇差しの半分以下。破片はロディの眼前にある。取り戻したいわ、あの破片を!
「これが欲しいの?」あなたが無闇に彷徨刀の破片に触らないでよ。「なまじ点検を怠った武器など破壊されて当然よ」
「でしょうね」全く冥惨亜流にばかり頼りがちなあたしは思い知らされるわ。「刀を壊されて初めて未熟である事を思い知るから」
「さて、そろそろ」また無数の分身であたしを取り囲んだわね。「二度目はもう見切れまい!」
どうするあたし? 今度は背後から右寄りが隙間。鞘に収めながらあたしは隙間に入るべきか悩む。そう、後一秒であたしを貫く無数の突きを前にして……
「足がふらついてるぞ、赤羽涼香」
地滑であたしの周りを舐め回すロディ。
「これも龍神剣の足取りよ」と誤魔化すあたしは更に言葉を続ける。「あなたの動きは段々読めてきたわ」
「どうかしら?」んん? 背後に回ったはずなのに正面に気配がする。「余所見してるの?」
危ないわね。この女ったら、また奇妙な動きで錯覚させるわね。多分、新しい歩方で気配察知を誤らせたわね。陽炎でもないし、地滑でもない。さっきの迅雷でもない。第四の歩方……「水鏡を躱すとは中々」
「水鏡……水の鏡って意味? つまり実と虚を切り離す事で前に居ると見せかけて背後から攻撃する為の歩方なのね」
「それ以上は種明かしに成る」足音が変わった! また歩方を変えてきたわね! 「露舞流の極意を受けよ、赤羽涼香!」
二度目は見切る……迅雷による一瞬の攻撃をほぼ紙一重で掠るあたし。左腕に切り傷が出来ちゃったわ、後でその数倍返してやるわ! そんな感じであたしは四つの歩方を巧みに使いこなすロディによる槍捌きに翻弄されながらもあいつの動きを読んでゆく。
そう、陽炎の時は突きによる攻撃は多彩と成る。でも水鏡の時は突きは単調。地滑の場合は歩方を出した後に足を一瞬止める。迅雷だと急所を狙うように突く。まだまだ詰めが甘いわね、ロディ・ジェイドムーン。
「チイ、仕方ない! 奥義を以てお前を殺す!」
「もうあなたの動きは……」「奥義は見切れまい!」って無数に分身した--いえ、あたしは囲まれたわ!
逃げ場所がない! いえ、あるにはあるけどそこへ突っ込んで良いのかしら? そう、真っ直ぐ飛んで避けるという逃げ場所に。あたしは考える……考える。いえ、まずいわこの奥義! 空中へ逃げれば更なる追撃が待ってる! そうあたしの勘が警告する! なのであたしは真っ直ぐロディに向かうように右足を踏みつける!
「悪手だ、百鬼夜行の前では……」「更なる追撃よりもマシでしょ!」踏んだと同時に素速く左足を前に向かって踏みつけ更に……覇斬撃で正面突破を図る--そう、決死の突撃斬りで!
覇斬撃はあたしの左脇腹に刺さる事で止めてしまうけど、封じたわ--そして首を刎ねさせて貰う!
そう、一瞬だったわ! この一瞬にあたしは懸けた……でも気付いたら壊される事に--あたしの彷徨刀が!
「何も突きだけが露舞流じゃない!」
咄嗟に距離を取るあたしだったが、ショックを隠しきれない。今まで世話に成った刀が壊され、先端が歯のように成るなんて。刃渡りは脇差しの半分以下。破片はロディの眼前にある。取り戻したいわ、あの破片を!
「これが欲しいの?」あなたが無闇に彷徨刀の破片に触らないでよ。「なまじ点検を怠った武器など破壊されて当然よ」
「でしょうね」全く冥惨亜流にばかり頼りがちなあたしは思い知らされるわ。「刀を壊されて初めて未熟である事を思い知るから」
「さて、そろそろ」また無数の分身であたしを取り囲んだわね。「二度目はもう見切れまい!」
どうするあたし? 今度は背後から右寄りが隙間。鞘に収めながらあたしは隙間に入るべきか悩む。そう、後一秒であたしを貫く無数の突きを前にして……
更新日:2015-02-17 07:45:52