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小説

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イプトゥリカと共に

 真っ青な空を、白い雲がゆっくりと流れていく。小高い丘から見える、美しいエメラルドグリーンの海は穏やかだ。優しい風が草花を揺らし、木々に咲き誇る薄紅色の花びらが、はらはらと宙を舞い踊る。
 白い壁の家々と、青い空と海、豊かな緑。美しい光景だと、アスマは思う。それと同時に、よくこの短期間で、という思いもあった。この島の復興には、まだ時間を要すると思っていたからだ。ヴェルハルトとの戦いから五年という月日が過ぎる中で、イプトゥリカの島は徐々にかつての姿を取り戻していった。無論、国の再建に向けて動き出した当時は、大変だったという他なかった。イプトゥリカの力があるとはいえ、それは自然を守るための力であり、瓦礫と化した建物の群れを修復出来る訳ではないのだから。それでも、短期間でかつての街並みを取り戻せたのは、ジバのディルクセイン、リープのイプシィ、アムのバルドといった、イプトゥリカに協力的であった国々の王達の協力があったからこそだ。
 各国から世界のためにと集まった有志の手によって蘇ったこの島には、そのまま住み着いた者も多くいる。初めはアスマ達だけだったこの島も、今では賑やかなものだ。大陸から多種多様な多くの人々が行き来し、島を活気付かせている。イプトゥリカへと続く光の道を、昔のように特定の者が通れるのではなく、誰もが自由に通れるよう解放したのだ。それだけではなく、多くの人が気軽にこの島へ来られるようにと、各国へ光の道を繋げている。
 島が復興し、多くの人々が行き交うようになっても、ここはまだまだ発展途上だ。それは、終わりのないものなのかもしれない。それを見続け、守っていくのが己に課せられた使命なのだろう。そう思いながら、アスマは目の前に舞い落ちてきた一片の花びらを手に取った。
「アスマ、ここにいたの?」
 背後からの声に振り返ると、そこには花嫁衣裳を纏ったサクラが立っていた。アスマ自身も、彼女の隣りに立つに相応しい正装をしている。今日という日は、イプトゥリカと人々の祝福を受け、二人が夫婦となった日なのだ。アスマに寄り添うサクラの表情は、幸せに満ちた穏やかなものである。

更新日:2014-11-13 23:20:35