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小説

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終わりと始まり

 凍てつく風が吹きつけ、アスマは目を細めながら周囲を見回した。風を防ぐようなものは何もなく、切り立った断崖の下には海が広がっている。大陸の最北端へと到達した一行は、イプトゥリカへの道を開く場所を探していた。
 既に陽は傾き、真っ白な大地も氷に埋め尽くされた海もオレンジ色に染まっている。早く道を開く場所を探し出さなければ、完全に陽が暮れてしまう。そうなれば、闇夜の中で場所を探すのはより困難だ。アスマは魂の記憶を呼び起こしながら、その場所を探す。だが、厚い雪に阻まれ、なかなかそこを特定する事が出来ない。
「……アスマ様」
 バルディの呼び声に彼の方へ振り返ると、バルディは崖際を指差してみせる。その方向へ視線を向けると、アスマの身長と同じくらいの高さはあるだろうか、雪の塊のようなものがあった。それに近付いていくが、やはり見た目は雪の塊にしか見えない。手を触れ雪を掻いてみると、雪の下には岩があった。それはただの岩ではなく、文字のようなものが刻まれている。これこそが、イプトゥリカへと続く道に違いない。
 岩にこびりついた雪を落とそうとするが、長い年月をかけて付着した雪はなかなか落ちるものではない。すると、ユーゴーに抱かれていたリィリーが彼の腕から離れ、岩の側へと歩み寄った。リィリーは一度手を叩き、その手を岩へと当てる。彼女は火の魔法を使ったのだろう、岩にこびりついた雪はみるみるうちに溶けてなくなっていった。
「オニーサン、キレイになった?」
「ああ。ありがとうリィリー」
 にっこりと笑うリィリーに、アスマはよくやってくれたと彼女の頭を撫でる。褒められた事を喜びユーゴーに抱きつく彼女を微笑ましく見つめながら、アスマは抱いたままのタテナシをバルディへ預けた。
 雪という衣がなくなった岩は先程よりも小さく見え、その表面には二つのくぼみがある。その中央には何かを差し込むような縦長の穴が開いていた。
「アスマ様、分かる?」
「勿論だ。ちゃんと覚えてるよ」
 いささか不安げなエリュウに対し、アスマは大丈夫だと笑って上着から二つの鏡を取り出した。魂の記憶に従い、左側のくぼみには月の鏡を、右側のくぼみには太陽の鏡をそれぞれはめ込む。そして、アスマは腰に携えたハクホウへ手をかけた。ハクホウは戦うための武器というだけではなく、道を開くための鍵でもあったのだ。鞘からハクホウを抜き、それを中央の縦穴へ差し込む。岩へとセットされた二つの鏡とハクホウが輝きを放ち、岩自体も淡い輝きを放ち始める。それは徐々に輝きを増し、やがて目を開けていられないほどの強い光を放った。その眩しさに誰もが腕や手で目元を覆う中、光は収束し、周囲に夕暮れの薄暗さが戻る。開かれた全員の目に映ったのは、天高く伸びる光の柱だった。
「これが……イプトゥリカへの道……?」
 光の柱を見上げ呟くユウに、その通りだとアスマは頷く。この光こそが、イプトゥリカへと繋がる道だ。
「ようやくここまで来ましたな」
 長かった道のりを思い返し、アスマへ声をかけるユーゴー。その声と皆の視線に頷き、アスマはハクホウを岩から抜き取り鞘へ戻した。
「ああ……行こう、イプトゥリカへ」
 イプトゥリカへの出発を告げるアスマの声に全員が頷き、天高く伸びる光の柱へと身を投じた。

更新日:2014-11-13 22:50:15