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小説

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合縁奇縁

 エスメラにある小さな村、サンア。フェンネ大陸最北端の村から三十分ほど歩いた海岸からは、別の大陸、ディティート大陸の姿が見られる。ようやく空が白み始めた頃、アスマ達はその海岸へ向かって歩いていた。
 ユウとエリュウはまだ眠そうな目をしており、ジュートはバルディに背負われたまま寝ている。
「タテナシ様、どうしてこんな時間に海へ?」
「あー……行けば分かるって」
 パーシファルの問いに、タテナシは面倒臭そうな返事を返す。タテナシも眠くはあるが、この時間でなければならない理由があった。
 やがて大陸の端に位置する砂浜へ到着すると、一行は眼前に広がる光景に驚きを浮かべた。砂浜から小さな浮島に向かって、一本の道が続いている。まるで海が割れたようだ、と、不思議なその光景に、エリュウとユウの眠気も飛んだようだ。聞けば、この海に現れる道は浮島を経由し、ディティート大陸まで続いているらしい。この道を通ってディティート大陸へ向かうと言うタテナシに頷き、一行は海の道を歩き始めた。
 細い道の周囲は完全に海。この道は潮が引いた時にだけ現れるのだと言いながら、先頭を行くタテナシは浅く海水に沈んでいる場所を飛び越えた。
 こんな経験は滅多に出来るものではないと思いながら、ユウは楽しそうに道を歩く。
 今日のところは浮島まで行くのが目標であり、正午までに浮島までいかないと道が消えてしまうとタテナシが告げた。のんびり歩いてはいられないな、とアスマが呟き、皆足早に海水を含んだ砂の道を進む。
 太陽が昇り、暖かな陽射しと少し冷たい潮風を受けながら三時間ほど歩くと、細い道が徐々に狭まってきた。
「海水が迫ってきたわねぇ……」
「海水に浸かったって、対して深くなりゃしねーよ。完全に潮が満ちたら大変だけどなー」
 泳いで渡るか? と言い出したタテナシに、それは嫌だとエリュウが首を横に振る。
 より歩く速度を上げて進んでいくと、長い道ではあったが何とか正午までには浮島に辿り着く事が出来た。
 島に上がってからは、明日に備えてディティート大陸側へ移動しようと島の中を進んでいく。木々が生い茂る人が住んでいない島は、果物等の食べ物が豊富に実っていた。食糧には不自由しないな、とタテナシが言いながら、木に実った赤い果実をもぎ取る。
 やがて視界が開け、ディティート大陸側へ抜ける頃には陽が暮れ、夕焼けの中で大陸がより鮮明に見えるようになっていた。
「本日はここで一泊ナリ。焚き火の用意じゃー!」
 タテナシの掛け声でユーゴー達が枯れ木を拾いに行く中、ジュートやエリュウ、ユウは食べ物を集めに行く。
 皆が再び集まり、焚き火を囲んでのんびりする頃にはすっかり夜になっており、綺麗な星空が広がっていた。

更新日:2014-11-13 20:54:22