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小説

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因縁

「うぉおーッ! 見えたぜエスメラーッ!」
 山々の間から遠くに見える街の姿に、タテナシは両手を振り上げ叫んだ。崖を飛び降りていきそうな程テンションの上がりきった彼女を皆が何とか落ち着かせ、やれやれと溜め息をつく。エスメラが見えたと言っても、今いる場所はまだ深い山の中なのだ、今日中に山を下りる事は出来ないだろう。
 足早に下り道を進んでいくタテナシの後を追いながら、小さく見える建物の群れに目を遣る。密集して見える建物の中に、円形の大きな建造物が見えた。
「あの建物、何ですかね?」
 パーシファルも丸い建物に気付いたのか、誰にともなく疑問を口にする。先頭を行くタテナシの耳に彼の言葉が聞こえたのか、彼女は振り返ってニヤリと笑った。明らかに怪しい笑みは、あの建物が何であるかを知っているからだろう。パーシファルは答えを求めて彼女に尋ねるが、タテナシは鼻歌を歌ってはぐらかす。様子から察するに、エスメラへ行くことを楽しみにしていたのはあの建物が関係しているのだろう。
 どんどん進んでいく山道を半日程歩き、我慢しきれなくなったのか、タテナシは崖際で足を止め崖下を覗き込んだ。
「なーここ下りようぜー。そーすりゃあっという間じゃん」
「下りようって……下りられる訳がないだろう」
 足場もない断崖を下りるなど、とんでもない事を言い出すタテナシに皆が無理だと彼女を諭すが、彼女は下りると言って聞かない。
「ホラ、キーエンで使った魔法があるだろ。アレ使えばいーじゃんかよ」
 吊り橋の側でエリュウが使った浮遊魔法を指すタテナシに、確かにその魔法は使えるが、と、エリュウとジュートが渋る。しかし、タテナシの勢いに根負けし、二人は深い溜め息をついた。
「もう……言い出したら聞かないんだからタテちゃんは。アスマ様、いいかしら?」
 仕方ないな、と答えたアスマに、タテナシは喜びの声を上げながらエリュウとジュートに早く魔法を使うようせがむ。困った表情を浮かべながらも二人はそれに従い、浮遊魔法を唱えた。
「よっしゃー! 行くぞ!」
 勢い良く崖に飛び込むタテナシに続き、皆も彼女に倣う。
 本来ならば急激に降下するところだが、浮遊魔法のお陰で降下速度は実に緩やかだ。崖に沿って曲がりくねった道を次々と飛び降り、あっという間に山を下っていく。最後の崖を下りると、目の前にはエスメラの首都へと続く道が広がる。
 にんまりと笑みを浮かべ、タテナシは緩い下り道の先を指差した。

更新日:2014-11-13 17:27:49