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Conspiracy

 
 
都心から車で2時間ほどの、湖を見下ろす山頂近くにある会員制リゾート施設。
黒塗りの高級車が何台も停まっているその施設には、政財界のVIPと呼ばれる大物たちが集まっていた。
彼らは互いに挨拶を交わすこともなく、時折ホステス役の女性に何か囁くと、あとは目の前の空間を静かに眺めていた。

八角形のリングを中心に、ローマ時代のコロッセオを彷彿とさせる擂り鉢状になった円形の試合会場で、VIPたちがそれぞれ指定席で息を飲むように待ち構えていると、観客席の照明が落とされると同時にリングへと続く花道が淡くライトアップされ、黄色いワンピース姿のグラビア・アイドルが軽やかな足取りで登場した。
そして彼女がリングに上がると同時に、もう一方の花道からは淡いピンクのテニスウェアを身に纏ったグラビア・アイドルが姿を現し、同じようにリングへと進み出た。
二人のグラビア・アイドルがリング上で構えると、軽やかなポップス調の曲が流れ始め、それにあわせてグラドルたちは、まるで写真撮影のようにポーズを極めながら衣装を脱ぎ始め、曲が終わる頃には二人ともビキニ姿になっていた。


彼女たちは、これから開催される地下格闘技イベントのラウンドガールだと言われてリング上でビキニ姿を披露しているのだが、実はこの二人、業界内では競演NGとして知れ渡っている間柄で、周囲に振りまく笑顔の中にも苛立ちを隠しきれない表情を窺わせていた。
それでも暫くの間は笑顔を見せていた二人だが、いつまで経っても選手も現れなければアナウンスも流れない状況に、苛立ちと不快感を露にし始めた頃、突然、大音響でとある有名プロレスラーのテーマ曲が流れ始めた。
闘争心を煽るような曲調に、二人のグラドルたちは嫌悪感を露にしながら、いつしか互いに睨み合っていた。

競演NGが周知の事実となっている二人のグラドルが、闘争心を煽る曲が流れる中、リング上で互いに睨みあっている状況は、次に起こることは誰の目にも明らかで、事実、テーマ曲がさびの部分で突然鳴り止むと、彼女たちは勢い良く相手に飛び掛っていったかと思うと、そのまま激しい取っ組合いを始めていた。

互いに髪を掴み合い、蹴って殴って押さえつけ、相手の水着を毟り取ると剥き出しになった豊満な乳房に攻撃を加えるヒステリックな闘いに、殴られた頬は赤黒く腫れ上がり、唇の端から血を滴らせ、身体中に青痣とミミズ腫れをつくりながら、それでも必死で闘う二人のグラドルたち。
時間の経過と共に益々激しさを増したかに見えたグラドルたちの死闘は、僅かなきっかけで優勢をもぎ取ったグラドルの一方的な攻撃で終わるかに見えた。
だが、相手が泣き叫びながら負けを認めても、攻撃の手を緩めないグラドルの異常性を察知したのか、リングに催涙ガスが放出されたことで漸く闘いは終了となった。



ハイパワーの換気装置がフル稼働して、リングから催涙ガスが排出されると同時に二人のグラビア・アイドルはリングから連れ出され、それと入れ替えにガウンを羽織った少女たちがリングに姿を現した。
東南アジア系の風貌をした、どう見ても12~3歳にしか見えない彼女たちは、まるで示し合わせたようにガウンを脱ぎ捨てると、そのまま相手に向かって間合いを詰め始めていた。
オープングローブこそ着装しているものの、彼女たちが身に纏っているのは陰部を隠すショーツのみ、即ちトップレス姿の少女たちは、僅かに膨らんだ胸を小刻みに震わせながら、まるでキックボクシングのようなローキックを相手の太腿に叩き込んでいた。
パシンパシンと肉を打つ音と、「あんっ」「あうっ」と切なげな悲鳴がリング上に充満する頃、彼女たちの闘いは互いの髪を鷲掴みにしながらの取っ組合いへと移行していた。
相手を押さえつけながら拳を叩き込み蹴りを繰り出す彼女たちの闘いは、総合格闘技を連想させるところもあったが、いつの間にかマウントポジションを奪い取った少女が、薄い布切れ越しに自分の陰部を相手の口元に押し付ける、いわゆるフェイスシッティング状態で相手の動きを完全に止めたところで決着がついた。
そして、仰向けに横たわったまま動かない相手の胸を踏み付けながら右腕を上げて勝利を宣言すると、リングを照らす照明が落とされた。


更新日:2022-09-05 16:37:35

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