官能小説

成人向けコンテンツについて
R-18

ここから先は未成年にふさわしくない成人向けの文章が含まれています。

18歳未満の方、もしくはこのような小説を不快に感じる方は「入室しません」を選択してください。

上記の内容に同意される場合のみ「入室します」をクリックしてお進みください。

  • 11 / 163 ページ

七位は見た

 こんにちは。私は、鎧鏡家奥方様候補雨花様専属御髪番(おぐしばん)梓の丸側仕え第七位……梓の七位です。
 本来、七位の仕事というのは、どこのお屋敷でも、候補様の毎朝の御髪の手入れに、身だしなみの全てを担当するらしいのですが、私は、毎日の雨花様の身だしなみのチェックと、一ヶ月に一度の散髪、イベント時のヘアメイクのみさせていただいております。
 それ以外は、余計な手出しはしないようにと言われておりますので、梓の丸に寝泊まりはしておりますが、普段は美容師として、父の店で働いております。
 職業柄、なんでしょうか。私は、人様との距離感がおかしくなっているようで。いつからか、髪に触れると、その方の人柄が、何となくわかるようになりました。まぁお人柄がわかったところで、どうということはないですが。


 さて。ある朝のことでした。雨花様の身支度が整った頃合いを見計り、お部屋に伺いますと、雨花様がベッドの上で、シロの下敷きになっていらっしゃいました。よくあることですので、別段驚きもせず部屋に入りますと、雨花様は『すいません。まだ支度、終わっていないんです』と、シロの下で、赤いお顔をしながらそう仰いました。……見ようによっては、シロにそういった意味で襲われている最中と見えなくも……あ……いけない、いけない。ついあらぬ妄想を……。美容師というのは、長時間人様の体に触れながら、話もせずに黙々と作業をこなすことが多い仕事です。そのせいでしょうか?私には、すぐにおかしな妄想の世界に入ってしまう癖がありまして……。私は、クールで冷淡と思われているようなのですが、そんなイメージを持たれている方に、申し訳なく思います。


「そのようですね。しばらくしてからまた参りましょうか?」


 踵を返そうとしたところ、雨花様は『いえ。ちょっと待ってもらってもいいですか?』とおっしゃいまして……。『こら、シロ!もうおしまい!』と、シロの大きな前足を、赤い顔をしながら持ち上げました。ふっ……本当にお可愛らしい。
 犬が怖い方には、失神しそうな光景でしょうね。雨花様は、幼少の頃、グレートデンを飼っていらしたそうで。大きな犬には慣れていらっしゃるのだそうです。
 雨花様が、シロの前足からスルリと抜け出し、頭を撫でると、シロは雨花様のお顔をベロベロと舐め始めました。……これも、見ようによっては、激しい愛撫………あ……いけない、いけない。


「うわぁ!シロ!やめって!」


 やめてと言う割には、喜んでいらっしゃるようにしか見えない雨花様から、シロはなかなか離れません。まぁ、私がシロでもそうするでしょうね。あの喜びようを見れば、もっと舐めてやろうと……あ。いけませんね。こんな妄想をしていることが露呈すれば、私は若様から打ち首ですよ。
 しばらくそうしたあと、ようやく『ホントにお終い』と言って、シロから離れた雨花様は、顔を洗って、お部屋に戻っていらっしゃいました。


「もー。シロって、ああいうとこ、皇に似てますよね?」

「え……。」


 部屋に戻られた雨花様が、私にそうおっしゃったのですが……。
 シロのああいうところが、若様に似ている?どういうところが、でしょうか?雨花様の上に乗って、お顔を舐めまわすシロの姿しか、私の脳内には残っていないのですが。そういったところ……ということでしょうか?それは……私では同意致しかねるというか……致しかねます、雨花様。


「え?あれ……何かオレ、おかしいこと言いました?」

「あ、いえ……。雨花様。少し髪が跳ねていらっしゃいます。」


 返事に困りそう言いますと、雨花様は鏡をご覧になりながら、『あーホントだ』とシロを睨みました。


「シロと遊んでたらぐちゃぐちゃになっちゃったよ、もう。こらー!ホント、可愛いヤツめ。」


 シロの頭をぐしゃぐしゃと撫でたあと、雨花様は洗面所に入って行かれました。


「……。」


 もしや、”可愛いヤツめ”……と、いうところが、若様とシロの共通点なのでしょうか?
 謎のまま雨花様をお見送りし、部屋に戻りますと、一位さんがいらっしゃいましたので、質問してみました。


「一位さん。」

「はい?」

「若様とシロは、似てますかね?」

「……七位。そのようなこと、人前で言ってはなりませんよ?」

「あ……いえ。雨花様がそうおっしゃっていたもので。」

「ああ。」


 一位さんは、『雨花様にはそう見えるのでしょうね』と、嬉しそうに笑っていらっしゃいましたが……。
 そういうことなのかもしれませんね。シロが、雨花様にだけあのように甘えるのと同じように、雨花様だけが知っている、若様のシロに似た一面があるのでしょう。

更新日:2014-10-13 22:29:04

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook