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街を歩く

 11月20日。さむいさむい一日でした。
 
 昨日、雨が降ったからかな。いきなり寒くて。帰り道でピューっと風が吹くと、ちょっとお洒落してズボンの裾を折り曲げているくるぶし辺りが冷えちゃって、そこだけ寒い。上はダッフルコートでヌクヌクなのに。

 そうか、今日は朝寝坊してしまって、起きてすぐに服を着替えて出てきたから洋服が黒づくめだしちょっとダサいんだった。
 
 だから、仕事が終わってスーツでピシッとしている大人たちが帰っている人ごみの中を、鞄をキュッと肩に抱えて俯きがちに帰る。
 
 誰かと目が合って、「うわっ、この人不細工!」とか「変な格好!」とか思われたくないのだ。
 
 というか、思われるのだろうが、そう思われていることに気付きたくない。そうやって下ばかり見ていると人とぶつかっちゃうからたまには顔を上げる。

 その瞬間に、赤いスカートをヒラヒラさせた金魚のようなイソギンチャクのような女性がいてぶつかりそうになる。

 スマートフォンの画面を必死に見つめて猪のようにズカズカと猛突進して歩いているのだった。服はとっても可愛らしいのに。

 私と正反対な女性らしいフリフリの服を着ていたら、見た目は猪でも、それはもう自信を持った歩き方ができるんだろう。

 自信満々なのは羨ましいのだけれども、女性らしさとはそういうことでもないな、とも思う。上品に慎ましくしなやかに。いやらしくない微かな色気を漂わせて歩きたいものだ。

 しかし、こんなふうに街中の人ごみをまっすぐ早歩きで進めるようになったのはここ1年くらいだろうか。街中と言っても東京ほどではないが、長崎の田舎から出てきた娘っ子としてはこの福岡の街は都会のようなもの。

 高校を卒業してとにかく街を離れたくてたどり着いた街だった。

 道を歩けばもの凄いスピードで真横を通り過ぎていく大人がたくさんいて、私もあんなふうになるんだって憧れたな。彼らが何をしているのかわからないくせにね。

 でも、歩く姿って人の気持ちとか性格を表すものだと思う。ずっと前だけを見て早足で歩くキャリアウーマン。厳しい顔をして歩くサラリーマン。ウキウキした顔で軽やかにステップを踏むおじいさん。


 あの頃の私は、慣れないということもあっったけど、顔をキョロキョロと動かして、立ち止まって、道にたくさん迷って、目的地に着くのも一苦労だった。今は経験も伴って(と言うと大げさだが)、スラスラと進める。
 
 時には俯きながら、ため息を吐きながら、泣きそうな顔をしながら、歩くときもある。それでも私は後戻りせず、前に進み続けている。

 それが正しいのかよく分からないけれど、少しだけ自分の誇りでもある。

 だから私は、これからも歩き続ける。

更新日:2014-10-02 11:42:12

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