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翌日。

講義を受けに大学まで来た訳だけど。
いや、噂って怖いね。
俺の周りに誰も座りやしないんだから。
遠巻きに俺を見て、ヒソヒソ。
これが講義が始まるまで続くんだよ。
大野智、って奴に文句を言いたくなるよ。
だけど俺は大野さんを探さない。
探したら探したで、また噂が広がっていくだけだ。
しかも俺にとって悪い噂が。
早く講義始まんないかな。
今日、何回目かのため息をついた時だった。

「ニノ」

この声は。
振り向くと相葉さんがいた。

「相葉さん」

安堵の息が漏れる。

「何だかすごいことになってるね。ニノの噂で持ちきりだよ」

周囲からのどよめきが聞こえてるはずなのに、俺の隣の席に座る相葉雅紀。
こいつは、俺が何しようが態度が全く変わらない。
そんなところが気に入っている。
中学からの腐れ縁もあるけどね。

「ね、噂ってどんな?」

「ええと、これって本人に言っていいのかな?」

相葉さんはちょっと思案顔。
そんなにひどい噂なのか。
皆の態度を見れば、何となくわかるけど。

「言ってくれよ」

相葉さんは俺の顔色を見て、じゃあ、言うけど、って前置きしてから話し出す。

「昨日、ニノを取り合って、男女間の修羅場が起きたって。で、男と公衆の面前で、その、キスしてたって」

そこで一旦相葉さんは言葉を切って、俺をじっと見る。

「いいよ。続けて」

「それで、ニノって女にモテてたじゃん。男にもモテると言うか」

相葉さんが言葉を切って、俯く。

「どっちでもいけるって言うか、両刀使いって言うか」

最後の方の声は、小さくフェードアウト。

何だそれ。

何だそれ。

何だそれ!

何だそれ!

更新日:2014-09-21 22:30:01

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