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「俺ね、見てたんだ。悪いとは思ったけど。女って怖ぇなって思ったよ。それでも二宮くんはすごく好きだったんだよね?」

そうだよ。
好きだった。
それから俺は、噂通りの行動を取った。
うわべだけの関係を繰り返すのは、とても楽だった。
心が、ない。
俺の心は、あの時に置いて来てしまった、から。

「あの後、二宮くんの様子を見て、ああ、あの子はあんなに愛されていたんだって思って」

少し羨ましいと思ったよ、って大野さんは笑った。

「でもね?俺は、二宮くんが気になって仕方なかった。雨の中で、なんだか小さくなってしまった二宮くんを、抱きしめたくなったんだ」

「何、言って」

「俺ね、男にこんなこと思うの始めてだよ?抱きしめて、大丈夫だよって言ってあげたかった」

「気持ち悪い」

思ったことは声に出ていた。

「そうだね。気持ち悪いね」

少し寂しそうに大野さんは言った。

「でも俺の中で二宮くんはどんどん大きくなっていって、いつか会ったら言おうと思ってた」

言えて良かった。
呟いた大野さんは満足そうな声で。
でも、また表情を曇らせる。

「二宮くんが同じ大学にいるってわかった時は嬉しくて。会いに行ったら、なんでこの人はこんなに寂しそうなんだって思った」

「俺が、寂しそう?」

はは、何言ってんだろう、この人。

「あの時と、二年前と同じ二宮くんを見て、俺思ったんだ。この人、全然傷癒えてないじゃん。俺が二年前、抱きしめてたら違ってたのかなって」

大野さんは俺を真剣な顔で見て。

「俺はね、もう後悔したくないの。だから俺は二宮くんに会いに来たんだ」

「会いに、来た?」

「そう。もう俺は、二宮くんを見てるだけじゃ嫌だった。二宮くんに俺、って存在を認識して欲しかった」

大野さんはクスクスと笑った。

「まさか、出会いがあんな風になるとは思わなかったけど。俺、二宮くんにキスしても、全然嫌じゃなかったよ」

俺も思い出して、顔をしかめる。

更新日:2014-10-19 14:19:56

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