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雪~すすぐ~

 今夜はやけに冷えると思って外を見たら雪が降ってきました。どうしてですかね?いつもと同じなのに雪の降る夜はやけに世界が静かに感じます。
 黒めがねさんは『雪』の成り立ちをご存知ですか?『雨』とはき清めるという意味を持つ『彗』が組み合わさってできてるんです。だから雪という文字は『雨で洗い清める』という意味があるんですよ。
 今、このタイミングで雪が降っている事に驚愕を隠しきれません。予想外の雪を目にして、僕は今日、自分が犯した過ちを洗い流してくれればいいのに、そう思っています。
 黒めがねさん、僕は今日、とんでもない過ちを犯してしまいました。いえ、結果として今日顕著になっただけで、過ちはずっと犯し続けていたんです。それを認める勇気が僕になかったばっかりに、傷つけなくていい人を傷つけてしまいました。
 一人は伊勢丹です。
 最近、彼が機嫌が悪いと言ってましたよね?原因は僕でした。どうやら恋人が僕と伊勢丹が付き合っているという噂を耳にしてしまい、それが原因で振られてしまった様なんです。やけになった伊勢丹に例の神社で押し倒されました。
「伊勢丹、こんなとこで嫌だよ!」
 外というのも嫌だったし、僕にとっては特別な場所になったこの神社の敷地内で行為に及ぶのも嫌でした。何より、お互いにとって空しい結果しか生まないこの関係を終わりにしたかった。けれど、僕の拒絶は傷ついた彼の神経を逆撫でし、怒りに油を注ぐ結果となってしまいました。
「松屋のくせに俺に逆らうのかよ!どうせ嫌がったって最後は気持ち良さそうによがるんだろ?お前。だったら黙っていつもみたいにズボン脱いでりゃいいんだよ」
 怒りにまかせた伊勢丹の台詞に、僕はいつもなら絶対に言わない―いえ、絶対に言ってはいけない一言を口にしていました。
「もう三越さんの代わりは嫌なんだ!」
 ガツッという鈍い音と共に、頬に痛みと口中に鉄臭い味が広がりました。
「思いあがるな!お前があの人の代わりになんかなるか!」
 そう怒鳴る伊勢丹は、殴られた僕より苦しそうな顔をしていました。
「……ごめん」
 彼の顔を見て、思わずそう呟いていました。そもそも、今の様な関係を続けることになったのは僕のせいでした。
「お前、こんな問題も解けねぇの?」
 そう言って僕の勉強を見てくれた彼に、僕は恋をしました。僕は夢中で彼を追いかけたけど、彼は別の人を見つめ続けました。僕らは互いに辛い片想いをし続ける友人でした。
 そんな二人の関係が醜く歪んでしまった過ちの夜。嵐の様に昂った互いの熱を吐き出した後、残ったのは泣きたくなる程の虚しさと後悔でした。きっと伊勢丹も同じだったのでしょう。
「悪い」
 行為のあと、彼が発した短い一言。後にも先にも、彼が僕に謝罪したのはこの時が初めてでした。
「別に…気にしなくていいよ、気持ち良かったし。お互い若いし、溜まるものは溜まるけど手当たり次第ってわけにもいかないだろ?ちょうど良かったんじゃない?」
 真っ赤な嘘でした。十分な準備もなく、お互い初めての性行為。しかも同性と。気持ち良かったのは挿入前までの事。それでも僕は必死に取り繕いました。
 なかったことにしたくなくて。
 関係が途切れてしまうのを恐れて。
 もしかしたらいつか、僕に振りむいてくれるかもしれない。そんな淡い期待を胸に秘めて。
 そんな僕の考えなど、彼にはお見通しだったのかもしれません。性行為の度、伊勢丹の態度は徐々に冷淡なものへと変わっていきました。
 本当はわかっていました。それが彼の優しさだということが。
「もう終わりにしよう」
 全てはその一言を僕に言わせる為のものだったのに。
 僕は伊勢丹が好きでした。
 本当に好きでした。
 けれど、彼が好きなのは僕じゃなかった。 
 その現実を受け止めることのできなかった僕の弱さが彼を苦しめてしまいました。
 悪い事って重なるものですね。こんな場面をこともあろうか東武に目撃されてしまったんです。

更新日:2014-08-26 23:22:04

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僕の黒めがねさん【百貨店擬人化二次】 R-18