• 1 / 11 ページ

お詫びの手紙

 はじめまして、松屋と言います。突然の手紙で驚いた事と思います。
 先日は初対面なのにご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。僕みたいな若造がスナックで酔いつぶれているなんて驚いたでしょう?でもあそこは食事の種類も豊富だし、実は僕、店の娘さんのルミちゃんの高校のOBなので、その縁もあってよく利用させてもらってるんです。なまじ気心が知れてるだけに飲みすぎたりもしてしまったんですが……。
 しかも、情けないことにあの時のことはほとんど覚えていないのです。あとでルミちゃんから詳細を聞きました。泣きながら酒を飲んでた僕の肩を叩き、憑いていた悪霊を祓ってくれたそうですね。ここ数日、やたらと肩凝りが酷く頭痛がしていたのですが、目が覚めてからはすっかり体が軽くなっていました(頭痛は続いていましたが、それは飲みすぎによる二日酔いのせいだと思います)
 酔っていた僕も祓ってもらった瞬間、体が軽くなったのを感じたのでしょう。あなたに子供の様に「すごい」とはしゃぎながら、あなたが固辞するのも構わずお酒を勧め続けたそうですね。ルミちゃんが怒りながら止めてくれたおかげで下戸の方に無理矢理飲ませる最悪な事態は避けられたようでほっとしています。
「どうせ僕なんて誰にも相手にされないんだ。僕だって幸せになりたいのに!」
 グラス片手に机に突っ伏してそう泣き喚く僕の頭を優しく撫で続けてくれたと聞きました。
「撫でるのを止めると『やめちゃやだ。もっと撫でて』と駄々をこねるものだから、気の毒に、松屋さんが眠るまでたっぷり30分はあたま撫でさせられてたわよ」
 ルミちゃんに呆れながら聞かされた時は自分に対する情けなさと、大学生にもなってそんな子供じみた態度をとった恥ずかしさ、そしてご迷惑をかけた申し訳なさにただひたすら赤面してしまいました。
 言い訳がましいのですが、プライベートで色々あり、また、それが誰かに相談できる内容でもなかった為、よくないとは思いつつもストレス発散にやけ酒を煽ってしまったのです。酒に逃げても酔いが醒めればまた現実がやってくるというのに…情けない事です。
 そもそも、あの日あなたが店に来たのは仕事だったそうですね。初対面の僕に親切にして下さったお礼とご迷惑をかけたお詫びも込めて本当は会って御挨拶をしたかったのですが、店に来るのも不定期とのことでルミちゃんに頼んでこの手紙を渡してもらうことにしました。
 先程、酔っていて覚えていないと言いましたが、おぼろげながら覚えている事が二点あります。
 ひとつはあなたが頭を撫でてくれた時の温もり。
 そしてもう一つはあなたが黒い眼鏡をかけていたことです。
 ルミちゃんにいくら聞いてもあなたの素性を教えてもらえなかったので、勝手ながらあなたの事を「黒めがねさん」と呼ばせてもらうことにします(気に触ったらすみません)
 改めてお礼を言わせて下さい。黒めがねさん、僕に親切にしてくれてありがとうございました。

更新日:2014-08-23 23:13:21

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

僕の黒めがねさん【百貨店擬人化二次】 R-18