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ふたつの時間。7
2014年08月15日(金) 11時00分00秒
テーマ:大まお空想小説





「あとは、買うものないの?」、

カートを押している僕に母さんが

ちょこんと首を傾げて聞いた。



「ないよ、大丈夫だから…」、

そう言ってから、何かが胸につっかえた。




「あるんじゃないの?・・」、


立ち止まってる僕に母さんが優しく言う。





「あのさ・・、母さん、僕・・」、

顔をあげて母さんを見つめると



「夕飯はうちで食べてね、彼も一緒に・・」

ニッコリ笑って僕からカートを受け取った。




「うん・・」、

僕は鞄を掴んで走り出した。
















カチャン” 静かに鍵が回る。



いつもならきちんと並んでいる彼の靴が

無造作に投げ出されている玄関。



レッスンバグが、廊下に置き去りで・・。




僕は静かにリビングに入った。



彼の姿は無くて、その先、僕の部屋のドアが

少しだけ開いていた。




そっと、部屋の中を覗くと、

僕のベッドの上で、彼がうつ伏せに寝ていた。


僕が近づいてもわからないほどよく眠っている。



ベッドの下に落ちていたのは、僕の洗濯物・・




そうか、ここを出た日の洗濯物をたたんでくれ

たんだね。



そのまま、泣き寝入り。



いつまで泣いていたのか、まだ頬は濡れていて

枕もうっすらシミになっていた。




僕はその髪をそっと撫でる。



オデコのシワが好きだよ。 


ちゅっとそこにキス。




「ん・・」、小さく響く声。



その声も大好きだから・・。


唇に、ちゅっとキスをすると、



「ん・・、なん・・で・・」、ぼんやりと

その瞳を僕に向けた。






「忘れ物しちゃって・・」、僕は、しっかりと

彼に抱き付いた。




「愛してる・・」、

深く唇を合わせて、僕は忘れ物をねだる。










「いくな・・・」、

僕を揺らしながら、何度も何度も彼の唇が

そう、動いた。


僕は、泣きながらその言葉を受け取った。









このまま、時間が、止まって欲しい。



このまま・・・。












更新日:2014-08-16 21:54:41

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