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ふたつの時間。4
2014年08月13日(水) 13時30分32秒
テーマ:大まお空想小説



「あ、おはよう…」、

新聞を読んでいた父さんに声を

かけた。


ちらりと僕を見た父さんは、無言

で新聞を畳むと、コーヒーに手を

伸ばした。











「突然お邪魔してすいません。」、



昨日、玄関の鍵を開けてくれたのは

父さんで

一瞬ひるんだ僕の横で彼は深く頭を

下げた。


僕の倍以上の時間を生きてる父さんは

瞬時に状況を理解して、


「今の君は先輩ではないんだな…」

そう言って背中を向けた。


遅れて玄関にやってきた母さんが

「どうしたの?、そんなとこで?」

僕の手を引き、後ろにいた彼に


「あら、え?…」、と驚いて

リビングヘ戻った父さんの背中を

見つめた。



二人で並んで座ったところに、

「やっと来たね…」、

兄さんが部屋から出てきた。


「ただいま…」、小さく言った僕に

「がんばれよ…」、声を出さずに

唇を動かした。




「出発前に、はなしておきたい事が

あるんだ…」、ぎゅっと拳を震わせ

僕が切り出すと


「突然申し訳ありません。」、

彼がソファーから降りて床に手を

付いた。


「先輩後輩の一線を越え、一番

大事なパートナーとして一緒に

過ごしてきました。

 今まで隠していて申し訳あり

ませんでした。」、

深く頭を床に付けた。


「それって…」、

母さんが口元を押さえていた。



彼の横に一緒に座って

「彼が好きなんだ…」、

僕の言葉に

「愛しています」、彼は父さんを

しっかりと見た。





父さんは、何も言わずにコーヒーを

飲んで、彼の目を見ていた。


母さんは、僕を…。



どのくらいの沈黙があったのかは

解らないけれど、

「誰も反対してないならいいんじゃ

ないの?…」、

兄さんのその言葉に、


「あなたが幸せなら…」、

母さんは、涙を溜めていた。




無言の父さんの横で一緒に夕飯を

食べていけと賑やかな母さんと

兄さん。


断りきれずに、彼は一緒に夕飯

を食べた。



父さんから無言で、注がれるビールを

必死に飲んだから、

「大丈夫…です、朝から仕事…が、

あるんで…帰ります…、」、

ふらつくその背中に


「少しでも、一緒に居なさい」、

父さんは自分の部屋に入って行った。



溢れる涙を、飛び込んだ彼の胸に

押し付けて僕は声を上げて泣いた。













「さっさと食べないと置いて行く」

父さんは、ゴルフバックを掴んだ。


「うん!」、

大きく頷いた僕の頭をわしゃわしゃ

と、その大きな手が撫でた。





更新日:2014-08-16 21:49:54

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