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ふたつの時間。
2014年08月09日(土) 22時30分00秒
テーマ:大まお空想小説




とっても長い暗闇の中を歩いていた。



こつん、こつんっと響くのは自分の

足音だと思っていたのに・・


自分の足は、柔らかな草の上を歩いて

いて、その音は、ずっと先から聞こえ

ている。



時々、その音は止まる。

まるで、僕の歩みを確認するかのように




そして、僕が近づきすぎないように、

またその音は進む。



追いつきたくて、

その音の主をしりたくて、



僕は走り出したいのに、この足は動かない。



決められた歩幅で、同じ速度で進むしか

出来ない。




このまま、ずっと追いつけないの?・・・


この先にいる人の背中を思い、涙が溢れる。





この先にいるのは、誰・・。


僕は誰を追いかけているの?







悔しくて、悲しくて、唇をキツク噛みしめた

その時、




ふわりと柔らかな香りに抱きしめられた。






真っ暗な世界が、一気に真っ白になり、今度は

眩しすぎて、僕を抱き締めるその人が見えない。




僕が振り返ろうとしたその時、


振り返るな!


僕の心の中に声が響いた。



そのまま、自分を信じてしっかりと前を向いて

突き進めばいい。



俺は、ずっとお前の背中を見つめているから・・





大丈夫だよ。






大丈夫だ。
















ゆっくりと、目を開けた僕。


荷解きで疲れて、ソファーでうたた寝をしていた

らしい。









2階のバルコニーから、綺麗な青空と海が見える。








この空も、海も、貴方に繋がっている。







壁には、彼がくれた時計。


上は、この街の時間を刻み、下は日本の時間を

示している。




もうすぐ、疲れた彼が帰ってくる・・・。



「ただいま・・」、優しい声に


「おかえり・・」、早く答えたい。













さてと・・。



僕は、次の段ボールを開けた。




更新日:2014-08-16 21:45:05

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