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 最近の旦那様はひどく体調が悪そうだ。口にはなさらないが、顔色も悪いし、気だるそうにため息をつかれる回数も多い。
「なあ、音。旦那様、そろそろアレかな?」
「そうみたいだね、雷」
 風邪とは違う、年に数回定期的に現れる症状。旦那様にはお知らせできないが、原因はわかってる。
「しっかし、御結婚されたら治ると思ったんだけどなぁ。伊勢丹様はなにやってんだよ」
 苛立ち交じりに雷はガリガリと頭を掻いている。
「そんなこと言って。お世話の必要がなくなったらそれはそれで寂しいくせに」
「うるせーな。お前だっておんなじだろ」
「……そうだね」
 俺と雷はここ、三越本店に鎮座するライオン像の付喪神だ。向かって左が雷、右が俺。主人である三越様にお仕えして今年で百年になる。よく、同じ顔で見分けがつかないと言われる。皆様には髪を横分けにしてるのが雷、真ん中分けが音ですよ、とお伝えするもなかなか難しいようだ。
 そんな俺らを旦那様は間違えた事はない。わざと髪型を変えても旦那様はぴたっと当てられる。不思議に思って尋ねても『見た目は似ていても、やっぱり違うからね』と穏やかに微笑まれるだけ。
『雷音』ではなく『雷』『音』と認識し、接して下さる旦那様に俺らは永遠の忠誠を誓う。旦那様がお嫁に行かれたのは寂しいし、嫌だけど、でもそれが旦那様の幸せの為なら…と涙を飲んだ。
 結婚されてもこうしてお仕えし、お役にたてるのはとても嬉しく、幸せに思う。だけど、辛そうな旦那様を見るくらいなら、寂しい方がよっぽどいい。きっと雷もそう思ってる。「雷、今日って伊勢丹様、みえる予定ないよね?」
「ないな」
「じゃあ仕方ないよね」
「仕方ねーよな」
 雷と顔を見合わせ、同時に口を開く。
「「今夜、いつも通りに」」

更新日:2014-08-11 22:41:22

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ライオンの見せる夢【百貨店擬人化二次】 R-18