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眼鏡越しの世界
ベッドから抜け出すと、コーヒーを入れるためのお湯だけ沸かして、洗面所に向かう大ちゃん。
顔を洗ってヘアスタイルを手ぐしで整えてリビングに戻ってきたときには眼鏡をかけている。
黒縁の大き目の眼鏡は、彫りの深い大ちゃんの美貌を浮き立たせる。
タオルを首にかけたまま、冷蔵庫を開けてミルクを取り出したり、サイフォンをセットしたり。
どんなお洒落なカフェのマスターよりもカッコいい後ろ姿。
何をしてもこなれていて、プロだな。と思わせるような立ち居振る舞い。
そんなモデルさんのようにキマッタ動作をじいいっと眺めながら、ベッドの中でゴロゴロしていると、
香ばしいコーヒーの香りが漂ってくる。
コトリ。とコーヒーの入ったカップをテーブルに置くと、パチン。とテレビをつける。
急ににぎやかになった部屋に、だんだんと目が覚めてくる。
昨日の余韻がそこかしこに残ったまったりとした空気が、現実へと引き戻される。
ぱさり。と新聞を広げた大ちゃんが、眼鏡を外してテーブルに置く。
「・・・あれ?大ちゃんって、そういえば、老眼?」
「・・・ぶっ。失礼だなーっ。お前。」
「だって、昨日のトリゾでも、台本見るとき眼鏡外してたじゃん。」
「そうだったかなーっ?」
「そうだよ。」
誰のことを見てると思ってるの?
どんな些細な癖だって、見逃さないぐらい見詰めてるんだからねっ!
「自分じゃ気がつかなかったなーっ。無意識の行動だからな。・・・そういえば、しんどいのかも。眼鏡かけたまま新聞読むの。」
「早いねーっ。まだ30そこそこなのに。」
近くが見えにくくなるんだよね?
老眼って・・・。
「ねえ。大ちゃん。」
「・・・ん?」
「僕の顔、どこまで見える?」
ベッドから抜け出し、ソファに座る大ちゃんの膝の上に乗っかる。
じいいっと見詰めながら、50cm・40cm・30cm・・・。と距離を縮めてゆく。
あ・・・。大ちゃんの吐息がかかる・・・。
と思ったときには、大ちゃんの両脇についた腕を摑まれて、キスされていた。
ちゅ。ちゅ。くちゅ。
何度も角度を変えて重ねられるキス。
「ふっ。んっ・・・。」
頭の芯がしびれてくるのに、テレビの雑音がどこか意識を保たせていて。
「はっ・・ぁ・・・。」
大きく息を吐いて、ゆっくりと離れてゆくくちびる。
「・・・うん。どんなに近くてもしっかり見えるよ?」
「・・・え?」
「だから、お前の顔。そもそもお前がしかけてきたんだぞ?」
「・・・あ。そっか・・・。」
すっかり忘れていた。
あまりにも大ちゃんとのキスが気持ちよくて。
「文字とかだけだな。弊害があるの。」
「そういうもんなんだあ・・・。」
「だから、ばっちりまおの顔見ながらキスできるよ?」
「・・・もしかして、大ちゃんっていつも目開けてるの?」
「まおの顔を見ていたいときには。な。」
「・・・恥ずかしいよ。ソレ。」
そりゃあ、キス顔のシャメをとったりはするけれど、そこには自分がどう見られているか?の意識がはっきりしている。
今のキスだって、そうだけど、いつも大ちゃんとのキスは頭がくらくらしてきて「愛してる。」ということ以外考えれなくなる。
テレビの雑音があってさえ、自分がしかけたことも忘れてしまうぐらいなのだ。
「どんな顔してるんだろ・・・。多分、だらしないよね。余裕ないし・・・。」
「どんな顔でも綺麗だよ。まおは。っつーか、どんな表情でも好き。のほうがぴったりかな?
余裕ないのは、俺だって一緒だよ。」
「・・・うそ。」
「・・・ほんと。」
「じゃあ、お前も見てろよ。」
「・・・もっと恥ずかしいよ。それに、大ちゃんの観察してる余裕ないし・・・。」
大ちゃんの両脇についた腕を持ち上げて、照れ隠しに首の後ろをぎゅっと抱き締めて肩に顔をうずめた。
「・・・なんつーか。まおのオーラを愛してるから。もちろん、俺を感じてる顔を見たい。ってのもあるけどな。」
「ん・・・。それ、ちょっとわかる・・・。」
付き合い始めの頃は、ただただ大ちゃんをひたすら見詰めていたかった。
でも、今はこうやって気配を感じたり、抱き合ったりするのが好き。
外見がどうこうよりも、心で感じ取る愛情で満たされる。
「・・・ねえ。おじいちゃんになって、目が見えなくなっても、こうやって抱き締めてキスしてね?」
「あたりめーだろ。いつまでも愛してるよ。まお。」
大ちゃんがコーヒーを入れる気配を感じて。
ソファに座る貴方の横で、一緒にテレビを見よう。
そっと指先を触れ合わせて、キスをしよう。
何十年先まで・・・・。
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うーん・・・。トリゾで大ちゃんが画面を見るときは、眼鏡をかけて、台本は外してかから、もしや老眼っ!?
顔を洗ってヘアスタイルを手ぐしで整えてリビングに戻ってきたときには眼鏡をかけている。
黒縁の大き目の眼鏡は、彫りの深い大ちゃんの美貌を浮き立たせる。
タオルを首にかけたまま、冷蔵庫を開けてミルクを取り出したり、サイフォンをセットしたり。
どんなお洒落なカフェのマスターよりもカッコいい後ろ姿。
何をしてもこなれていて、プロだな。と思わせるような立ち居振る舞い。
そんなモデルさんのようにキマッタ動作をじいいっと眺めながら、ベッドの中でゴロゴロしていると、
香ばしいコーヒーの香りが漂ってくる。
コトリ。とコーヒーの入ったカップをテーブルに置くと、パチン。とテレビをつける。
急ににぎやかになった部屋に、だんだんと目が覚めてくる。
昨日の余韻がそこかしこに残ったまったりとした空気が、現実へと引き戻される。
ぱさり。と新聞を広げた大ちゃんが、眼鏡を外してテーブルに置く。
「・・・あれ?大ちゃんって、そういえば、老眼?」
「・・・ぶっ。失礼だなーっ。お前。」
「だって、昨日のトリゾでも、台本見るとき眼鏡外してたじゃん。」
「そうだったかなーっ?」
「そうだよ。」
誰のことを見てると思ってるの?
どんな些細な癖だって、見逃さないぐらい見詰めてるんだからねっ!
「自分じゃ気がつかなかったなーっ。無意識の行動だからな。・・・そういえば、しんどいのかも。眼鏡かけたまま新聞読むの。」
「早いねーっ。まだ30そこそこなのに。」
近くが見えにくくなるんだよね?
老眼って・・・。
「ねえ。大ちゃん。」
「・・・ん?」
「僕の顔、どこまで見える?」
ベッドから抜け出し、ソファに座る大ちゃんの膝の上に乗っかる。
じいいっと見詰めながら、50cm・40cm・30cm・・・。と距離を縮めてゆく。
あ・・・。大ちゃんの吐息がかかる・・・。
と思ったときには、大ちゃんの両脇についた腕を摑まれて、キスされていた。
ちゅ。ちゅ。くちゅ。
何度も角度を変えて重ねられるキス。
「ふっ。んっ・・・。」
頭の芯がしびれてくるのに、テレビの雑音がどこか意識を保たせていて。
「はっ・・ぁ・・・。」
大きく息を吐いて、ゆっくりと離れてゆくくちびる。
「・・・うん。どんなに近くてもしっかり見えるよ?」
「・・・え?」
「だから、お前の顔。そもそもお前がしかけてきたんだぞ?」
「・・・あ。そっか・・・。」
すっかり忘れていた。
あまりにも大ちゃんとのキスが気持ちよくて。
「文字とかだけだな。弊害があるの。」
「そういうもんなんだあ・・・。」
「だから、ばっちりまおの顔見ながらキスできるよ?」
「・・・もしかして、大ちゃんっていつも目開けてるの?」
「まおの顔を見ていたいときには。な。」
「・・・恥ずかしいよ。ソレ。」
そりゃあ、キス顔のシャメをとったりはするけれど、そこには自分がどう見られているか?の意識がはっきりしている。
今のキスだって、そうだけど、いつも大ちゃんとのキスは頭がくらくらしてきて「愛してる。」ということ以外考えれなくなる。
テレビの雑音があってさえ、自分がしかけたことも忘れてしまうぐらいなのだ。
「どんな顔してるんだろ・・・。多分、だらしないよね。余裕ないし・・・。」
「どんな顔でも綺麗だよ。まおは。っつーか、どんな表情でも好き。のほうがぴったりかな?
余裕ないのは、俺だって一緒だよ。」
「・・・うそ。」
「・・・ほんと。」
「じゃあ、お前も見てろよ。」
「・・・もっと恥ずかしいよ。それに、大ちゃんの観察してる余裕ないし・・・。」
大ちゃんの両脇についた腕を持ち上げて、照れ隠しに首の後ろをぎゅっと抱き締めて肩に顔をうずめた。
「・・・なんつーか。まおのオーラを愛してるから。もちろん、俺を感じてる顔を見たい。ってのもあるけどな。」
「ん・・・。それ、ちょっとわかる・・・。」
付き合い始めの頃は、ただただ大ちゃんをひたすら見詰めていたかった。
でも、今はこうやって気配を感じたり、抱き合ったりするのが好き。
外見がどうこうよりも、心で感じ取る愛情で満たされる。
「・・・ねえ。おじいちゃんになって、目が見えなくなっても、こうやって抱き締めてキスしてね?」
「あたりめーだろ。いつまでも愛してるよ。まお。」
大ちゃんがコーヒーを入れる気配を感じて。
ソファに座る貴方の横で、一緒にテレビを見よう。
そっと指先を触れ合わせて、キスをしよう。
何十年先まで・・・・。
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うーん・・・。トリゾで大ちゃんが画面を見るときは、眼鏡をかけて、台本は外してかから、もしや老眼っ!?
更新日:2014-07-09 18:41:09