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ミノと食事を楽しんだ翌日。
今日は早朝から個人の仕事が入っていたけれど、テミンは頭痛が酷くて起きることができずにいる。

朝陽を遮るようにカーテンを閉め切って、電気を消した部屋。

それでも響く、小さな音。
洩れる明かり。

全てが痛みに変わり、目尻には涙が滲んでいた。

枕元に頭を押し付けるように何度も体勢を変えているけれど、数時間前に飲んだ鎮痛剤はまだ役目を果たしてくれない。

真っ青な顔を歪ませるテミンを前にどうすることもできず、ミノはただひたすら隣に付いている。


少ししてようやく起き上がることができたテミンを後ろから支え、ミノが口許にそっとスポーツドリンクの入ったグラスの縁を当てると。

「ん…」

微かに口を開けたのを見て、ゆっくりグラスを傾けた。

喉元が小さく動き、ふた口ほど飲んだだろうか。
顔を背けるような仕草にグラスを置いてから、辛くないように体勢を変える。

「また寝るか?」

鈍痛どころか、まだ鋭い痛みが走る頭。
頷いたテミンを横にならせようと体を動かせば、辛そうに顔を歪めた。

「ごめん、動かさない方がいい?」

何も分からないから、手探りで。
側にいようと決めてから、不器用ながらにミノは手を尽くしてくれている。

どうにか少しでも楽にさせてやれないかと思いながらテミンの小さな頭をそっと枕に沈めたところで、ドアから明かりが洩れてマネージャーが部屋に入ってきた。

「テミン、今日は無理そうか?」

大きな体を屈めてベッドの脇にしゃがみ、できるだけ勘に障らない声で聞くと。
「もう、時間…?」と、頼りない声が聞こえる。

「午後に時間ずらしてもらったけど、あと20分くらいで出ないと間に合わないんだ。」

こんな状態で、あと20分で仕事場に向かうなんて。
無理なことは見れば分かるはずなのにと、返事を待つマネージャーを歯痒く思っていたけれど。

「…行く」

テミンのひと言に、ミノは驚いて青褪めた顔を覗き込んだ。

「じゃあ、時間まで休んでていいから。また声掛けに来るな。」

そう言い部屋を出て行ったマネージャーの後ろ姿を見送った後、そっとテミンの背中に手を置く。

「テミン、ほんとに行けるか?」

「だいじょ、ぶ…」

心配するミノに、小さな返事。

やがてタイムリミットの時間になり、マネージャーが顔を出して。
ミノの力を借りてやっとのことで体を起こしたテミンを、抱えるように強い力で支えた。

「行って、きます」

力なく微笑んだ青い顔に、ミノは心配で後を追いかけたけれど。

「…ヒョン、待っててね」

「ん?」

帰ってきたら、また側にいて?と。
頼りない声音でも、強請ることは可愛くて。

「分かったから、無理するなよ?」

肩にそっと手を置けば、テミンは小さく頷いた。




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更新日:2015-01-06 00:44:45

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