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陽の射し込む白い廊下の先。
教えられた病室の前で、一度立ち止まる。

短いノックの後に、ミノがドアを開けると。

「ミノヒョン…?」

驚いたのか、テミンが大きく目を見開いた。

「オニュヒョンから聞いたよ。」

そのひと言に、瞳が不安に染まって。

「…たく、夏なんだから気を付けないとダメだろ?」

優しい叱責に、今度はきょとんと首を傾げる。
力が抜けたようなテミンの表情に、ミノは笑いながらベッドの脇の椅子に腰かけた。

「着替え持ってきたから。」

「…ありがと」

「上だけでも着替える?」

昨晩と同じ部屋着のままだろうと、大きな鞄のバッグの中から出したTシャツ。
早速着替えようと体を起こし、着ていたシャツに手を掛けようとして。

ちらっと隣に視線を移せば、大きな瞳と目が合った。

「…あっち向いててよ」

なんだか照れくさくてそう頼んだのに。

「なに恥ずかしがってんだよ。別にいつも普通に着替えてるだろ?」

そう笑われて、判然としないまま仕方なく少しだけ背中を晒す。
けれどやっぱり気になって、もう一度視線をミノに投げかけた。

「分かったって。見ないから。」

後ろを向いたミノを見て、手早く持ってきてもらったTシャツを頭からすっぽりとかぶる。

「着た?」

「うん」

体の向きを元に戻したミノは、脱ぎっぱなしのシャツを手に取り簡単に畳んだ。

「あと、何か欲しいものとかある?」

「うーん…」

話を遮るようにノックの音が響き、「失礼します」と運ばれてきた昼食。
備え付けのテーブルの上に置かれたそれを、テミンは浮かない表情で見詰める。

「食欲ないの?」

ミノの声を聞きながらやる気がなさそうに箸を取ったものの、二口食べて箸を置いた。
そんなテミンの様子に優しく背中をさすってやると。

「ね…、ミノヒョン」

「ん?」

小さな声で、口ごもりながら。

「たまには、…我が儘言っていい?」

「なに?」

「…食べさせて」

俯いたまま零したテミンの言葉に驚きつつ、珍しい我が儘にミノは相好を崩した。


更新日:2014-07-25 23:15:43

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