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過ち

夕方になっても暑さの消えない季節。
仕事を終えたテミンは、強い西日に目を細める。

数日前に海外から帰ってきた足でそのまま連日仕事だったこともあり、ひとり宿舎に戻ってソファーに寝転んだ。

「あれ、テミンいたのか」

眠りかけたところで声が聞こえ、重くなった瞼を無理矢理開ける。

「ミノヒョン…?」

「どうした?こんな早くから寝て。」

「んー…」

「また貧血?」

ソファーの脇にしゃがんだミノの顔がすぐ近くにあって。
テミンは少し照れくさくて長い睫毛を伏せた。

「そうじゃないけど…」

口籠った後、ふとこの時間にミノが宿舎にいることを不思議に思い顔を上げる。

「ヒョン、もう帰ってきたの?」

「うん。すぐ出るけど…」

行先は、きっとソナのところ。
そんなことを思って気落ちしていると。

「大丈夫か?調子悪い?」

そっと手で触れた額が予想よりも熱かったらしい。
心配そうに覗き込む大きな垂れ目を、テミンは静かに見詰め返した。

「平気。ヒョン、ソナのとこ行くんでしょ?」

そう聞くと、ミノは「ん…」と曖昧に返事をしてもう一度テミンの額に触れる。

「あんまり顔色良くないな…」

独り言のように呟き、立ち上がって一度自室に姿を消して。
部屋から微かに聞こえるミノの声。

その内容は聞き取れなかったけれど。

部屋から出てきてしばらくしてもダイニングテーブルで雑誌を眺めているミノに、テミンは横になっていた体を起こして声を掛けた。

「ヒョン、行かないの?」

すると端正な顔を上げて。

「今日はやめたから、ここにいるよ。」

「え…?」

「体調良くないんだろ?今日は俺たち以外は遅くまで仕事だし、ひとりだと心配だからさ。」

放って行ってくれて構わなかったのに。
ミノの優しさに、テミンは返す言葉を見失ってしまった。

「なんか食べたい物あったら買ってこようか?」

「あ…、ううん。ある物で平気」

「夕飯の頃には起こしてやるから、ゆっくり休め。」

穏やかにそう言われて、テミンは小さく頷き再び横になる。

完全に眠りに落ちる一歩手前。
意識はほとんどなかったけれど、肩に薄い毛布がそっと掛かったのが分かった。


更新日:2014-07-24 00:42:16

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