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高く付く代償 後篇

 ここ四週間は殿下も落ち着いていた……あの演説映像を見るまで。

「バルッカアアアアアア!」院内に設置されたテレビに『バラック・バレラー』が映った途端、殿下は暴走した!

「落ち着いて……ワアア!」「信じられないわ! 力でナースを吹っ飛ばす!」「男でもラスター様を止める事は出来んのかああ!」今の私は非力--殿下を法術で癒すしかない。

「森の神々は癒しを求め、木々を慰める……」

「私のフェロモンでも殿下の進撃は止まらない!」「私はまだ歌う、殿下を止められるんだったら!」「毒針でも通じない……うお!」フェラーネ、ミソラ、そしてヒクサーでも殿下は止める事が出来ない。

「--万物の神々よ、我に自然の力を与えたまえ、ナチュラルヒール!」

 緑色の優しき光は殿下の心を癒し……「うおおおおおおお!」癒して……うう! 殿下は私を突き飛ばした!

「痛い。ミソラの歌を邪魔した」ミソラが庇ったから私は掠り傷で済んだ。

「どうして殿下は私達の癒しまで通じないの?」

「オオオオオオアアアア、バルカアアアアア!」

「いけない、窓を突き破る気だ!」ヒクサーが回り込むもすぐに弾き飛ばす殿下! 「ハグアア、どこにこんな力を持ってる!」

「その窓は超強化硝子で出来てます! いくら殿下の力でも……」「まあその前に自分との勝負を引き受けて下さい、ラスター殿下?」嫌な男が院内に来た--アグニス・ムーンサルトが銃剣を構えて殿下の前に立ちはだかる!

「どけええええええ!」利き腕によるストレートでアグニスの顔面めがけて放つけど、それを難なく躱し……窓ガラスにひびを--同時に殿下の拳に出血が浮き出る!

「中々の……さあ殺し合おう、殿下あああ!」アグニスは真っ直ぐ銃剣の鋭い部分を殿下の額に放つ--右の平が出血するくらい掴んだ殿下はアグニスを蛍光灯付きの灯りに向けて投げた!

「エーテル……だが、これでいい!」伝統に銃剣を一旦刺したアグニス。その後、銃剣を突き出しながら思い切り引っ張り……「サンダーブラスター!」銃剣から放たれる電気の波は真っ直ぐ殿下に向かう!

「ウオオオオオオ!」自ら受けながらアグニスに突進する殿下--このままでは死んでしまう!

「あの攻撃を受けてまで……アガアア!」アグニスの首を握りしめながら地面に向かって思い切り叩きつけようと……「エアロブラスター!」もう突き出した銃剣を勢い良く引っ張った--放たれた風は殿下をアグニスが突き刺した灯りに向かって飛ばした!

「アガアアアアア……」エーテルの放電を受けた後、地面に落っこちる殿下。

「ふう、さすがにこれで……」いえ、まだ! 殿下が立ち上がる! 「どうやら殺さないといけないかな、殿下?」

「いや止めろ、アグニス!」あ、ヒクサーが止めに入った!

「邪魔するのか、ヒクサー? 自分と殿下の戦いに邪魔が入ったら……」「ラスター殿下は気絶しておられる」本当だ--フェラーネが揺さぶると殿下はうつ伏せに倒れ込んでもう動かなくなった。

「ラスター殿下はどうして暴れたの?」

「映像にはもうあの男は居ないわ」

「サンドロール……君は知ってるのか?」

「はい、あそこに『バラック・バレラー』が映ってた」あの男がどうして退席したのかわからない--でも退席する時、正面を向いたせいでラスター殿下の眼に彼が映った。

「フフ、知ってるよ。確かあの男とラスター殿下は……」「それ以上言えばアグニスよ、貴様の生死に関わる」上手くファース殿下が現れた……どうしてここに来たのかな?

更新日:2014-07-25 07:20:27

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