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「こちら、前菜でございます。春の息吹をイメージしてお作りいたしました」
「・・・・」
「良いんじゃねぇか?さすが慣れてんなおまえ」
この機会に配膳を櫂にさせてみたのだ。ホテルで一通り学んできただけあって、緊張のせいか多少ぎこちないものの、上座から、左手の方から置くなどの基本的なことは出来ている。最後に自分のところに置いて、櫂が席に着くのを待って箸を取った。
「俺んとこの料理とえれぇ違いだな」
そう言って関田さんが笑った。
「高い金払ってもらうんだ。そうじゃなきゃ意味ねぇんだよ」
目の前には黒い漆の皿に乗った小さな籠がある。その籠の中には上品に盛り付けられた木の芽や筍が並んでいる。
正直、味の心配はしていない。食べなくても秋山さんの経歴を見れば、間違いないからだ。
問題は盛り付けだ。これは作り手のセンスが問われる。俺が気に入って買った器がいくつかあって、とりあえずそれを使ってほしいと伝えておいたのだが、小さな小鉢が欲しかったのかもしれない。笹で編んだものを小鉢代わりに使っている。
悪くねぇ。
手先も器用だ。しかも全体的に纏まりがあって上品だ。なぜうちのようなところに来たのか、ますますわからない。文句の言いようがねぇ。
スマホでその前菜の写真を撮ってから口に運んだ。
やはり予想通り美味しい。
「ちと味が薄いが、こんなもんか?」
「あ?女性や年配の客はこんくらいがちょうど良いんじゃねぇか?おやっさんは酒飲むからな」
「俺もこんくらいでちょうど良いと思うっす。しかもホテルより美味いっすよこれ!」
「けど、この中の一つくらい濃い味のもんがあっても良いかもな」
そう言ってポケットからメモ帳を取り出して、そのことを書いていると、おやっさんが言った。
「昔はあのクソ女とかジジイババアつってたのによ」
「・・・・」
俺は一瞬手を止めて苦笑した。
「こちら、前菜でございます。春の息吹をイメージしてお作りいたしました」
「・・・・」
「良いんじゃねぇか?さすが慣れてんなおまえ」
この機会に配膳を櫂にさせてみたのだ。ホテルで一通り学んできただけあって、緊張のせいか多少ぎこちないものの、上座から、左手の方から置くなどの基本的なことは出来ている。最後に自分のところに置いて、櫂が席に着くのを待って箸を取った。
「俺んとこの料理とえれぇ違いだな」
そう言って関田さんが笑った。
「高い金払ってもらうんだ。そうじゃなきゃ意味ねぇんだよ」
目の前には黒い漆の皿に乗った小さな籠がある。その籠の中には上品に盛り付けられた木の芽や筍が並んでいる。
正直、味の心配はしていない。食べなくても秋山さんの経歴を見れば、間違いないからだ。
問題は盛り付けだ。これは作り手のセンスが問われる。俺が気に入って買った器がいくつかあって、とりあえずそれを使ってほしいと伝えておいたのだが、小さな小鉢が欲しかったのかもしれない。笹で編んだものを小鉢代わりに使っている。
悪くねぇ。
手先も器用だ。しかも全体的に纏まりがあって上品だ。なぜうちのようなところに来たのか、ますますわからない。文句の言いようがねぇ。
スマホでその前菜の写真を撮ってから口に運んだ。
やはり予想通り美味しい。
「ちと味が薄いが、こんなもんか?」
「あ?女性や年配の客はこんくらいがちょうど良いんじゃねぇか?おやっさんは酒飲むからな」
「俺もこんくらいでちょうど良いと思うっす。しかもホテルより美味いっすよこれ!」
「けど、この中の一つくらい濃い味のもんがあっても良いかもな」
そう言ってポケットからメモ帳を取り出して、そのことを書いていると、おやっさんが言った。
「昔はあのクソ女とかジジイババアつってたのによ」
「・・・・」
俺は一瞬手を止めて苦笑した。
更新日:2014-05-06 19:32:03