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第二章

 今日はまた違う隠れ家に運ばれた。場所的にはスコッツデールの外れのようだ。俺の家に近い。と言っても、車で一時間ぐらいかかりそうだが。土地勘のある場所で、少しホッとした。だからといって、簡単に逃げ出せるわけじゃないだろうが。
 連れてこられた家は、鬱蒼とした森の中にあるログホーム。樹に囲まれた庭が妙に明るいライトで照らされている。侵入者があればすぐに見つかるだろうが、逃亡者もすぐに見つかるということだ。
 家の中に入ると、それ程広くもない家の中に数十人の野郎どもが犇いている。この人数に追いかけられて、逃げ切れるということもないだろう。俺は、むさ苦しい野郎どもを横目に見ながらJ.Kに連れられ二階へ向う。そして更に上にある屋根裏部屋に閉じ込められた。やっぱり監禁されるらしい。J.Kに理由を訊くこともできない。
 閉じ込められたのは、汚くて狭い部屋。ベッドと机と椅子しかない。歩くと板張りの床が不気味な音をたてる。ご丁寧にドアの外に見張りもいるらしい。
 何故、こんな所に閉じ込められるんだろう。俺が暴れるからか? 暴れる理由がなければ大人しくしているんだ。と言っても、信じてはもらえないだろうな。
 屋根裏部屋の小さな窓から外を覗いてみる。窓の下に家の正面玄関が見えていた。小さな窓から見える範囲を一通り眺めて、屋根伝いに外に出られないかと考えた。しかし、肝心の窓が外から打ち付けられていて開かない。それに逃げ出したところで、無駄だとは解っている。でも、逃げたいと思う理由が帰って来た。
 森の中から滑り込むように入ってきた、やたらとボディの長い高級車が、家の正面につけられていた。慌てて迎えに出た部下が後部座席のドアを開けると、サムが降りてくる。ライトに煌々と照らされたに庭先に降り立つマフィアのボス。その後をリックが幸せそうな表情で降りてきていた。降りた途端、嬉しそうにサムの腕にしがみ付いている。今日の用事って、やっぱり俺の想像どおりだったんだ。サムは興味のある男娼に声をかけに行ったんだ。

更新日:2014-03-19 15:01:04

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