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ネイティブはいずこへ?

「ジッルオ……そちはいつまで甘えておるか」

「甘えてないって。僕はただ命が惜しくて……」「それを『甘え』と言う!」「だからお前は『チェッケ』だよ!」「『ビリーバ』と呼ばれたきゃ命を捨ててしまえ!」みんなして僕を虐めて!

「静まらんか、お主ら!」目の前にいる長老は僕の両横一列に鎮座する戦士達の口を閉じさせる。

「いずれにしても次で最後だ。もしもそこで成果を上げない場合は……命はないと思うのだ」事実上の追放。「そ、そんな!」

「ただし、期限は三日じゃ。三日間はそちを『チェッケ』から『ビリーバ』にさせる」三日じゃ短すぎるよ。

「三日あるだけ有り難いと思え、ジッルオ!」「しかし一週間じゃないんだ」「一週間じゃあ甘えだろ?」「でも三日で人が変われんのか?」「無理無理。だってジッルオだぜ」僕は昔から戦士達に嫌われている。

「だから静まらんか!」長老みたいな力があれば横にあいつらだって黙らせるのに。

「あ、の?」質問? 何で見習いから声がするの?

「そちはマッインイ。言いたい事をこの場で申してみよ」マッインイかよ!

「う、わさですけど。ここに旅の一行がやってくると聞いて」

「また『ライブネット』の情報かよ!」「ネットの情報を鵜呑みにするな!」「新聞を読め、新聞を!」戦士達は未だに新聞、スクリーンからの情報に頼るんだな。「一応、裏は、取りました」

「ほほう、どこの馬の骨からだ?」マッインイは恐らく二十枚はある写真の中から三枚程取り出す。「リーディングペーパーの辛抱三郎。セティスジュ帝国のフリージャーナリスト活動するコーユ・ニッジ。そして我等『ビリリアン』の戦士メデッチォ」

「メデッチォ!」「その情報は本当か!」戦士達は一斉に部族一の戦士メデッチォの方に視線を向ける。「俺様はこの目で捉えた」

「ならばどうして話さなかった?」普通はそうなるよな。

「……何故なら旅の一行の中にはライブ王国の高貴なる者が居る以上、どう話を切り出せばいいかと迷いまして!」

「ライブ王国なら受け入れを蹴ってしまえ!」「奴等のせいでどれだけの家族が切り裂かれたと思っておる!」「我が部族だって下手をすれば滅ぼされかねない!」僕もあいつらをこの集落に招くのは嫌だ。

「三度目だぞ、静まらんか!」静めた後、咳払いした長老。「反対の意見はあるようじゃがこちらも監視を含めて三日間の滞在を認めるのはどうかな?」

「何、正気か長老!」「わしは反対ですぞ!」「ただものとおかもとを受け入れるくらい忌々しい!」誰だよ、その二つは? 「俺様は賛成だ」

「く!」「最強の戦士が賛成すれば」「反対出来なくなるではないか!」「ジョニーマンが賛成したなら反対出来たのに!」誰だよ、それ! 「あ、の?」

「おっと忘れていた。マッインイは下がっていい」すっかりマッインイを忘れていた。「はい」

「とにかくわしの案に反対の者は一人もいないと言う事でいいか?」戦士達は沈黙--これが暗黙の了解なのか。

「では旅の一行を受け入れる準備をするのだ……おっとジッルオを忘れていた」このままでは……

「ジッルオはすぐに狩りを始めろ! そちは戦士以前にまず見習いとして認められなければならんのだ」

「は、はい」あんな怪物相手じゃ勝てないって。「はっきりせんか、腹に力を入れて」

「はあああああい!」しまった……咽に力を入れすぎて痛い! 「うむ。では今日はここまで。皆の者よ、明日に備えて解散」

 僕と長老以外のみんなは去ってゆく……まだ居たっけ? 「ジッルオは本当に馬鹿で無能で最低ね」

「やめてくれ、ネッチィ。最低は取り消してくれ!」ネッチィは僕の幼馴染にしていじめっ子。「じゃあジッルオは本当に馬鹿で阿呆で無能で間抜けでドスケベね」

「もっと酷くなった。どうして僕に冷たいんだよ」「だって『チェッケ』でしょ?」反論出来なかった。

「じゃあその馬鹿で阿呆で無能で間抜けで度スケベですっとこどっこいな『チェッケ』ジッルオは果たして『ウンクテヒ』を倒せるのか?」無理だろうな、きっと。

「じゃあ明日から倒しに行きましょう、ジッルオ! 大丈夫だって。僕が付いてるから」「『僕』は止めてくれ。何度も言ってるのに」ややこしいんだからさ。

「え? 何の話?」一方通行な会話しかできない。僕らはそんな関係なんだ。でも……「可愛いから許す」可愛くなかったらとっくの昔に関係は続かないんだけど。

「素直じゃないな、二人は」締めは長老が決めるなんて。

更新日:2014-02-07 07:42:14

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