• 2 / 22 ページ

2

 ベランダで、最後の一服をしようと、そっと、そこに出た。







 いるはずのない、甘い香りが俺を包んだ気がして、一瞬たちつくす。




 いつも、背中からふんわり抱き付いて、すりすりとその頬をよせて、




そして必ず・・・たばこくさい・・・って、文句を言う。







 慌てて、煙草の煙を払えば、ニッコリ笑って、それも大ちゃんの匂い




だから、大好き・・・。そう言って、俺にキスをくれた。







 俺は、その笑顔を俺だけのものにしたかった。俺のそばに縛り付けて




おこうとした。 







 ずっと一緒に、ずっと二人で生きていこう。 俺が求めたのは、たった一言。







 だけど、それはあまりにも重く辛い選択を、させてしまう事になった。







 俺の求めたその答えとは違う、別の道に向かったあいつの手を、俺は掴む事が




出来なかった。 そのまま、あいつは俺の前からいなくなった。













 「大輔?」、背中で俺を呼ぶのは、あいつじゃない。







 「ああ、今いくよ・・・・」、







 二人の過ごしたこの部屋を、俺は今日、出ていく。































不定期に更新




更新日:2014-01-06 23:50:22

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook