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第十五話 ニーフェの森

「どうだい、兄ちゃん!うちは良いもん置いてるよ!」

ユラトはウディル村で月に一度ぐらいの周期で来る、露天商の商品を見ていた。

(今回は種類が豊富な気がするな……)

この森の中で旅をすることで彼は宿泊や食事以外に、あまりお金を使わなかったため、そこそこ貯まっていたのだった。

そこでユラトは、旅で役に立つ良い装備があれば、思い切って値の張る物でも買おうと思い、色々見ていた。

露天商たちは、この森で見つかった物だけでなく、西の大陸全体で新たに見つかった武器や防具、装身具、他にも調合された薬草、非常食や果実なども並べていた。

「これなんてどうだい?」

見せられたのは、深く落ち着いた赤い色の鞘に入った剣だった。

ユラトは手に取り、鞘から剣を抜いた。

「これは……サーベル?……じゃないな……見たことの無い剣だ……」

片刃で刀身は傷一つ無く、独特の反りをもっていた。

よく見ると鍔が凝っていて、顔は竜で体は鱗を持った鹿のような体で黄金の角と蹄をもった4本足の魔物が彫られていた。

「これはね、ベニグレンと言う名前のカタナだよ」

「カタナ?」

「古代の世界の遥か東の方に存在した、他の国とは違う、少し特殊な国があったらしい。そこに凄い鍛冶師がいたらしくてねぇ。その人物の作品なんだよ」

「へぇ……」

「値段は張るが、切れ味は抜群だよ!なんせユニークレアだからね!」

ユラトはカタナを手に持ち、軽く振ってみた。

「凄い……軽い……」

「軽量化のルーンが付いてるからね!それに、防腐処理とか色々あるよ!……あ、そうだ!鞘に入れて、一気に抜いてごらんよ。鞘にもルーンがあるんだよ、それ」

「え、そうなんですか?(珍しいな……鞘にか……)」

ユラトは、言われたとおりカタナを鞘に戻し、柄に手をかけ、一気に横に刀を抜いてみた。

すると、音を立てることなく凄い速度で空気を切り裂きながら、カタナが鞘から抜き放たれていた。

しかも、刀身から風が出た。

「―――これは!?」

「兄ちゃん……こっちに向けて抜くのはやめてくれないか?……」

「あっ……すいません……その果実買います……」

店の果物がいくつか切れて転がっていた。

「……で、買うかね?」

「いくらなんですか?」

値段を見て彼は驚いた。

「えええっ!!そんなにするのか……」

ユラトの持っているお金では、全く足りない値段だった。

「そりゃ、そうだよ兄ちゃん。なんてたってユニークレアなんだからねぇ」

「なかなか良い物って買えないもんなんだな……はぁ……がんばってもっと貯めるかぁ……」

手にお金の入った袋を握り締め、ため息をつきながら、彼はただ空を眺めていた。

ウディル村の日常より。

更新日:2015-03-24 19:24:11

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