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お題:暑いオンラインゲーム 制限時間:2時間
眼鏡型携帯端末、通称グラスが世に出回り初めて、かれこれ10年が経とうとしていた。
グラスは、眼鏡のレンズにPC機能を搭載したもので、インターネットの閲覧や電話、ワイヤレスイヤホンと連動した音楽の再生、写真撮影などが出来る。
付属品として、二つの指輪が連なった形状のリングと呼ばれるものがあり、これが、PCで言うマウスの役割を果たしているのである。
ユーザーはこのリングを駆使し文字の入力や、グラスの画面上にあるカーソルを移動して、操作を行う。
歩行時はグラス上の画面に表示されるものは透過されており、前の景色が見えるよう設定されている。また、障害物や段差などに近づいた際は、警告が表示され、画面が強制的にクリアになるなど、安全面にも気が配られていた。
しかし、ネットに出回っているウイルスなどに感染すると、歩行時にもその透過機能をなくした、現実にはいない異物を見せることもできる。
本来なら、透過度が一定以上下回る画面をグラス上に写すことは、法令上特例を覗いて禁止されている。
僕も一度、グラスでいかがわしいサイトを見ていた影響か、大昔に流行っていたらしい、ゆるキャラと呼ばれる、地域宣伝キャラクターの着ぐるみに、夜の散歩中出くわしたことがある。
最初は不審者かと思ったが、眼鏡を外すとそいつは消えた。
面白いなと思って、もう一度掛けると、なんと目と鼻の先にそいつは居た。
僕は驚き悲鳴を上げ、グラスを力一杯放り投げてしまった。その拍子に僕の初代グラスは破損してしまった。実に嫌な思い出である。
後日調べると、あの日見た着ぐるみはにゃんまげという名前だった。暗がりの歩道脇に佇むにゃんまげは非常に不気味であった。
グラスには、ダウンロードして楽しむゲーム用アプリというものがあり、それは、現代の一大産業でもある。
その中でもフリーアプリと呼ばれる、一般人が作成したものがあり、僕は最近このフリーアプリをダウンロードして遊ぶことにハマっていた。
だが、ある程度の数を堪能すると、普通のものでは満足出来なくなってきて、変わり種を探すようになる。
それでネット上を色々探索して遂に見つけたのが、『深淵ウェブ』と呼ばれる、闇サイトだった。
深淵ウェブでは、法令上違法とされている、歩行しながらにして透過を無くした画面をグラス上に表示させるアプリが幾つも紹介されている。
その中でも、僕が一番夢中になったのは、お化け屋敷の疑似体験アプリだった。
どこでもランダムなタイミングや場所で、いきなり透過を無くした異物を表示させるものもあれば、特定の建物にだけ異物を表示させるものもある。
僕は、後者のアプリをより好んでダウンロードし、各地の心霊スポットを回っていた。
中には、驚かせたり、怖がらせるだけでなく、謎解き要素を混ぜて、宝探しをさせるようなものもあったりした。
その、心霊スポット巡りの途中で、僕は彼女に会った。
都内から遠く離れた、ある廃村の暗い、廃病院のなか、僕は彼女を見つけた。
「こんにちは」
「えっ、はい。こんにちは」
最初は幽霊かと思ったが、礼儀正しく挨拶をされたので、ゴーグルを外してみると、変わらず彼女の姿があった。
「暑いですね」
沈黙が居たたまれなくて、僕は当たり前のことを言う。
「そうですね」
そうですね。の後に、8月ですから当たり前ですねと、彼女の中で続いていそうだなと、卑屈に自分の発言を一人で恥じていると、意外にも彼女はこう言葉を継いだ。
「外は雪が降っているのに、不思議ですね」
グラス上で窓の外に降る雪を指さし笑う彼女に、僕は一目惚れをした。
それから、僕は、柄にもなく彼女に積極的に喋り、なんとか連絡先の交換までこぎ着けることに成功した。
しかし、なかなか、会う為の理由が作れなかった。小まめに連絡を取り合うも、マニアックなゲームアプリの情報やり取りぐらいしか出来ない自分が情けなくてしょうが無い。
しかし、満を持して昨晩チャンスが到来した。彼女とある話題で盛り上がり、ある噂が本当かどうかを一緒に確かめようと約束したのだ。
その噂とは、ある大流行を博した海外制のゲームアプリのものである。
グラスは、眼鏡のレンズにPC機能を搭載したもので、インターネットの閲覧や電話、ワイヤレスイヤホンと連動した音楽の再生、写真撮影などが出来る。
付属品として、二つの指輪が連なった形状のリングと呼ばれるものがあり、これが、PCで言うマウスの役割を果たしているのである。
ユーザーはこのリングを駆使し文字の入力や、グラスの画面上にあるカーソルを移動して、操作を行う。
歩行時はグラス上の画面に表示されるものは透過されており、前の景色が見えるよう設定されている。また、障害物や段差などに近づいた際は、警告が表示され、画面が強制的にクリアになるなど、安全面にも気が配られていた。
しかし、ネットに出回っているウイルスなどに感染すると、歩行時にもその透過機能をなくした、現実にはいない異物を見せることもできる。
本来なら、透過度が一定以上下回る画面をグラス上に写すことは、法令上特例を覗いて禁止されている。
僕も一度、グラスでいかがわしいサイトを見ていた影響か、大昔に流行っていたらしい、ゆるキャラと呼ばれる、地域宣伝キャラクターの着ぐるみに、夜の散歩中出くわしたことがある。
最初は不審者かと思ったが、眼鏡を外すとそいつは消えた。
面白いなと思って、もう一度掛けると、なんと目と鼻の先にそいつは居た。
僕は驚き悲鳴を上げ、グラスを力一杯放り投げてしまった。その拍子に僕の初代グラスは破損してしまった。実に嫌な思い出である。
後日調べると、あの日見た着ぐるみはにゃんまげという名前だった。暗がりの歩道脇に佇むにゃんまげは非常に不気味であった。
グラスには、ダウンロードして楽しむゲーム用アプリというものがあり、それは、現代の一大産業でもある。
その中でもフリーアプリと呼ばれる、一般人が作成したものがあり、僕は最近このフリーアプリをダウンロードして遊ぶことにハマっていた。
だが、ある程度の数を堪能すると、普通のものでは満足出来なくなってきて、変わり種を探すようになる。
それでネット上を色々探索して遂に見つけたのが、『深淵ウェブ』と呼ばれる、闇サイトだった。
深淵ウェブでは、法令上違法とされている、歩行しながらにして透過を無くした画面をグラス上に表示させるアプリが幾つも紹介されている。
その中でも、僕が一番夢中になったのは、お化け屋敷の疑似体験アプリだった。
どこでもランダムなタイミングや場所で、いきなり透過を無くした異物を表示させるものもあれば、特定の建物にだけ異物を表示させるものもある。
僕は、後者のアプリをより好んでダウンロードし、各地の心霊スポットを回っていた。
中には、驚かせたり、怖がらせるだけでなく、謎解き要素を混ぜて、宝探しをさせるようなものもあったりした。
その、心霊スポット巡りの途中で、僕は彼女に会った。
都内から遠く離れた、ある廃村の暗い、廃病院のなか、僕は彼女を見つけた。
「こんにちは」
「えっ、はい。こんにちは」
最初は幽霊かと思ったが、礼儀正しく挨拶をされたので、ゴーグルを外してみると、変わらず彼女の姿があった。
「暑いですね」
沈黙が居たたまれなくて、僕は当たり前のことを言う。
「そうですね」
そうですね。の後に、8月ですから当たり前ですねと、彼女の中で続いていそうだなと、卑屈に自分の発言を一人で恥じていると、意外にも彼女はこう言葉を継いだ。
「外は雪が降っているのに、不思議ですね」
グラス上で窓の外に降る雪を指さし笑う彼女に、僕は一目惚れをした。
それから、僕は、柄にもなく彼女に積極的に喋り、なんとか連絡先の交換までこぎ着けることに成功した。
しかし、なかなか、会う為の理由が作れなかった。小まめに連絡を取り合うも、マニアックなゲームアプリの情報やり取りぐらいしか出来ない自分が情けなくてしょうが無い。
しかし、満を持して昨晩チャンスが到来した。彼女とある話題で盛り上がり、ある噂が本当かどうかを一緒に確かめようと約束したのだ。
その噂とは、ある大流行を博した海外制のゲームアプリのものである。
更新日:2017-06-25 00:18:59