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お題:犬の会話 必須要素:育毛剤 制限時間:1時間

我輩は犬である。名前はペソという。

我が主である、亜理紗殿は我輩をペソペソしているからというなんとも擬音擬音した理由で我輩の名を付けた。

我輩は雄である。しかし、亜理紗殿はペソ子と我輩を呼ぶことが多々ある。

○○子という呼び名は普通、日本人女性に使われることぐらい、犬の我輩でも承知している。犬は日本語を喋れないが、リスニングは出来るし、大体の文字だって理解できる。ペンは握れないが、私は薔薇という字を辞書を引かずとも思い出すことが出来る。もちろんカタカナで。

我輩が亜理紗殿からペソ子と呼ばれることを嫌がっていることを、我輩のドッグフードを食いに来る、犬と飼い主に命名された猫に打ち明けると、犬という名の猫は興味無さ気にふーんと言った後、社交辞令のような疑問を呈す。

「ペソ子と呼ばれることが何で嫌なんだ」

「そりゃ、我輩は雄だからだ」

「○玉がないのにか」

「○玉が無くとも、○○こはある」

「お前の○○は既に、男の象徴としての機能を果たしていない。ただの、尿道の一部だ。情けないねぇ。・・・雄の象徴である○○こでさえ、子は付いている。お前のように○○こは、その事に文句を垂れ流すことはない。垂れ流すのは尿だけだ」

「しかしだな。もっと、我輩としては男らしい名で呼ばれたい」

「男の象徴である、○○ことかけて、ペソと解きます」

「ほう、その心は」

「ペニソなんてどうでしょう」

「謎かけになってなくない? っていうか、我輩そんな渾名、絶対嫌だよ」

「ペニ○?」

「もっと嫌だよ!」

「うるせぇ! あっ、犬ジャン。また、ペソ子の飯食いやがって。てめぇは、となりの家のジジイの出す猫飯食らってろ!」

我輩が、大声で怒鳴ったせいで、主が目を覚ましたようだった。蔵の扉を勢いよく開けて、開口一番犬という名の猫に暴言を吐く。主が日曜の午前中に目を覚ますのは珍しいことだ。よっぽど、耳障りだったらしい。

声が無駄に大きくなってしまうのは我輩の悩みの一つである。

我が主の姿を見るなり犬という名の猫は、じゃあな○○こと我輩を局部呼ばわりして、木造の壁に開いた小さな穴から素早く逃げていった。

我が主は、低血圧なせいのため、寝起きはとても、顔色が悪い。元々外出して遊ぶことなどもしない為、元々色白であり、朝方は肌の色が日本人形じみている。太い眉を八の字に顰めながら、我輩に近づくと、我輩の尾は自然とブンブンと回転しだす。ほとんど反射的に我輩は仰向けになり、気分の高鳴りを忠誠のポーズと共に主へお届けする。

「おー、今日もペソ子のアソコは立派だねぇ。使い物にならないのにー。あっ、○○毛、すげー伸びてるじゃん」

我輩も忘れていたが、一週間前に我が主の父上殿が最近薄毛に悩んでおり、どこの育毛剤が一番効果があるのかと試すため、我輩の、右肩、左肩、額、腹、局部にそれぞれ、別のモノを付着させていた。

どうやら、よりにもよって局部につけた育毛剤は犬にも効果が覿面だったらしい。

「犬の棒に当たったわけだね」

我が主は、うまいのか、よくわからないこと言って、笑った。

更新日:2015-10-31 23:27:34

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