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お題:大人の雲 必須要素:Twitter 制限時間:2時間
秋になると、空に白いサバが浮かぶことを皆様はご存知だろうか。
時たま、ヒツジも浮かびあがる。
夜になれば、クジラが浮かぶし、ヤギやコウマ、トカゲだって浮かぶ。
空には海も陸も無いのに、魚や、動物、幻獣、王に姫、何だって浮かび上がる。
「きっと大昔の人たちは、僕らがテレビを見ているように、空を眺めていたんだろうね」
私に秋の空に関する知識を披露した後に、彼はそう締めた。
話の始まりは、当時のクラスメイトたちの恋愛模様の噂についてだった。
どうも現在、一人の女の子をめぐって、二人の男子が火花を散らしているらしい。
それだけなら、少年漫画の三角関係という野暮で下賎ながらも、やはり面白い展開であるというだけで済んだのだが、どうも、渦中の女の子が本当に二人の男児に本気で心揺らいでいるらしいことが胸糞悪さを生んでいるのだ。
『私、エヌ君が好きなの』と宣言した翌週には、『やっぱり、エイチさんが好き』と堂々と親友に曰うという言動をかれこれ、2ヶ月ほど続けているらしい。
「女心は秋の空とは言ったものだね」
私の名前がアキなモノだから、彼の何気ないその呟きに少し私はカチンと来た。少し、声を荒げて私は応える。
「知ってた? 元々、その言葉って、女心じゃなくて、男心なのよ。男なんて皆、不倫常習犯なんだわ。アンタだって、今は草食系で通ってるけど、これからどんな男に変貌するか・・・」
「はははっ、不倫常習犯が男に多いなら、悪い遊び人に引っかかる人数は男性より女性のほうが多いってことだね」
「・・・なっ」
顔が真っ赤になるのを感じた。頭が真っ白になり、彼を蹴っ飛ばしてやろうかと思った瞬間、彼はボソッと呟く。
「でも、秋の空はキレイだよね」
「はっ・・・は?」
不意に呟かれたものだから、理解が追いつかず、私がキレイなどと褒めちぎられたのかと勘違いして、今度は
別の理由で頬が紅潮していくのが分かった。
「ほら、見てみなよ」
そう言って、空に向かって、スマートフォンのレンズを向け、シャッター音を鳴らす彼。そこで、ようやく、彼の先ほどのコメントの意味が正しく解釈され、私は羞恥心から更に鬼のごとく赤面した。
「あれは、さば雲。いわし雲とも言うね。この夕方の時間帯は特は夕日が反射して神秘的だろ。昨日はヒツジ雲が浮かんでいたよ」
「な、なにそれ、ばっかじゃないの! ただの雲じゃない。サバにもいわしにも見えないっつーの!」
「あはは、面白いだろ。魚に動物、何でもありさ。夜になればペガサスやクジラなんかも浮かんでる」
「星座の話? ペガサス座は聞いたことあるけど、クジラ座なんてあるの?」
「うん。ただし、クジラはクジラでもただのクジラじゃないよ。アンドロメダ姫を襲う化け物さ。他にも、顕微鏡座なんてある。空は面白いよ。きっと・・・」
『きっと大昔の人たちは、僕らがテレビを見ているように、空を眺めていたんだろうね』
「ふーん」
なんて、当時は彼の薀蓄の披露会に付き合わされることには慣れっこだった私は、又、始まった。長くなるかな。と思って、彼の話を途切れさせるために、ポケットからスマートフォンを取り出してツイッターのアプリを起動した。
友達のつまらない呟きを知らせる通知が数件着ているだけだった。どうやら、彼が話の続きを語ることを諦めたらしいのを確認してから、そっと私は空を眺めてみる。
確かに、彼の言うとおり、綺麗な空が広がっていた。
それから、隣の彼をふと眺めると、クスリとこちらを横目に見て笑っていやがる。
なんだか、悔しくて、私は何を思ったか、背伸びして彼の唇を奪ってやった。
どうだと、彼の反応を確かめてみると、彼は平然とした顔で、何事も無かったように、下校を再開した。
対して私はというと、魂が抜けたように、先を行く彼の背中を眺めて数分間立ち尽くしていた。
在り来たりな言葉だけど、彼は私の知らない景色を見せてくれた。
私が普段は着目もしない角度からいろんな物事を見ていて、隣に居ると、惜しげもなく自分の見えている世界を話してくれた。
だから、私は彼に懐いて、よく行動を共にしていたのだった。
高校を卒業してからは疎遠になってしまったけれど、あの日と同じ雲を見つけるたびに、私はサバの名前と彼とのキスのことを思い出すのであった。
時たま、ヒツジも浮かびあがる。
夜になれば、クジラが浮かぶし、ヤギやコウマ、トカゲだって浮かぶ。
空には海も陸も無いのに、魚や、動物、幻獣、王に姫、何だって浮かび上がる。
「きっと大昔の人たちは、僕らがテレビを見ているように、空を眺めていたんだろうね」
私に秋の空に関する知識を披露した後に、彼はそう締めた。
話の始まりは、当時のクラスメイトたちの恋愛模様の噂についてだった。
どうも現在、一人の女の子をめぐって、二人の男子が火花を散らしているらしい。
それだけなら、少年漫画の三角関係という野暮で下賎ながらも、やはり面白い展開であるというだけで済んだのだが、どうも、渦中の女の子が本当に二人の男児に本気で心揺らいでいるらしいことが胸糞悪さを生んでいるのだ。
『私、エヌ君が好きなの』と宣言した翌週には、『やっぱり、エイチさんが好き』と堂々と親友に曰うという言動をかれこれ、2ヶ月ほど続けているらしい。
「女心は秋の空とは言ったものだね」
私の名前がアキなモノだから、彼の何気ないその呟きに少し私はカチンと来た。少し、声を荒げて私は応える。
「知ってた? 元々、その言葉って、女心じゃなくて、男心なのよ。男なんて皆、不倫常習犯なんだわ。アンタだって、今は草食系で通ってるけど、これからどんな男に変貌するか・・・」
「はははっ、不倫常習犯が男に多いなら、悪い遊び人に引っかかる人数は男性より女性のほうが多いってことだね」
「・・・なっ」
顔が真っ赤になるのを感じた。頭が真っ白になり、彼を蹴っ飛ばしてやろうかと思った瞬間、彼はボソッと呟く。
「でも、秋の空はキレイだよね」
「はっ・・・は?」
不意に呟かれたものだから、理解が追いつかず、私がキレイなどと褒めちぎられたのかと勘違いして、今度は
別の理由で頬が紅潮していくのが分かった。
「ほら、見てみなよ」
そう言って、空に向かって、スマートフォンのレンズを向け、シャッター音を鳴らす彼。そこで、ようやく、彼の先ほどのコメントの意味が正しく解釈され、私は羞恥心から更に鬼のごとく赤面した。
「あれは、さば雲。いわし雲とも言うね。この夕方の時間帯は特は夕日が反射して神秘的だろ。昨日はヒツジ雲が浮かんでいたよ」
「な、なにそれ、ばっかじゃないの! ただの雲じゃない。サバにもいわしにも見えないっつーの!」
「あはは、面白いだろ。魚に動物、何でもありさ。夜になればペガサスやクジラなんかも浮かんでる」
「星座の話? ペガサス座は聞いたことあるけど、クジラ座なんてあるの?」
「うん。ただし、クジラはクジラでもただのクジラじゃないよ。アンドロメダ姫を襲う化け物さ。他にも、顕微鏡座なんてある。空は面白いよ。きっと・・・」
『きっと大昔の人たちは、僕らがテレビを見ているように、空を眺めていたんだろうね』
「ふーん」
なんて、当時は彼の薀蓄の披露会に付き合わされることには慣れっこだった私は、又、始まった。長くなるかな。と思って、彼の話を途切れさせるために、ポケットからスマートフォンを取り出してツイッターのアプリを起動した。
友達のつまらない呟きを知らせる通知が数件着ているだけだった。どうやら、彼が話の続きを語ることを諦めたらしいのを確認してから、そっと私は空を眺めてみる。
確かに、彼の言うとおり、綺麗な空が広がっていた。
それから、隣の彼をふと眺めると、クスリとこちらを横目に見て笑っていやがる。
なんだか、悔しくて、私は何を思ったか、背伸びして彼の唇を奪ってやった。
どうだと、彼の反応を確かめてみると、彼は平然とした顔で、何事も無かったように、下校を再開した。
対して私はというと、魂が抜けたように、先を行く彼の背中を眺めて数分間立ち尽くしていた。
在り来たりな言葉だけど、彼は私の知らない景色を見せてくれた。
私が普段は着目もしない角度からいろんな物事を見ていて、隣に居ると、惜しげもなく自分の見えている世界を話してくれた。
だから、私は彼に懐いて、よく行動を共にしていたのだった。
高校を卒業してからは疎遠になってしまったけれど、あの日と同じ雲を見つけるたびに、私はサバの名前と彼とのキスのことを思い出すのであった。
更新日:2016-05-03 03:58:09