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専業主夫 2


「 ひとつ、聞きたい。」、ギイに向かい自分の胸の前で腕を組む。



 「ん?なんだい。いくつでもいいぞ?」嬉しそうにギイが待ち構える。



 「もしかして、さっきのクダラナイ、ボディチエックのために僕は

  ここに早く来いと言われたのか?」、言いながら怒りが沸いて来た。



 「 え?そうなのか?」、ギイは後ろに控えた男達に振り返る。

  小さく頷く男に歩み寄ると、その襟首をつかんで

 「どうゆうことだ?。

   普通に高校生活が送りたいんだって言っただろ!」そう、怒鳴った。



 「申し訳ありません。最低限の安全確認はいたしませんと・・・」

 抵抗するでもなく、襟首をつかまれたままその男は答えた。

  それでも、その手をギイは離そうとしない。



 「おい!」 僕は思わず、その手を払ってしまった。そして・・



 「どこのお坊ちゃまか知らないがな、普通の高校生が学校にSPなんか

 つれてこねーよ。ボディチエックだかなんだか知らないがそんな事する

 学校だなんてきいてないし、だいたいだ。

  そもそもお坊ちゃまならそれに相応しい学校他にもあるだろうが。

  お坊ちゃまの我侭に付き合うために僕はこの学院に来たんじゃないぞ。

  こんな黒い集団に囲まれて授業を受けるつもりもないし、ましてや君と

 同室なんてこちらからお断りだ。

  今すぐ、学院側に話をして君を個室にしてもらうよ。

  僕は部屋が無ければ物置でもなんでも生活できる。一般庶民だからね。」

 



  言いたいことを一気に言い切ったらすっきりした。



  じゃあ、と、踵を返したその時

 

 「わるかった。章三。」 振り返るとそこにはギイが深々と頭を下げていた。

 「章三の言うとうりだ。俺が間違っていた。」まだ、頭を上げない。



  その様子に、周りの男たちが僕に何とかしろと視線を集める。

  でも、どうして良いか判らないでいると

 「ルームメイトに恵まれましたね」と、僕の後ろで声がした。

 「島岡?」 ギイがバツの悪そうな顔をする。



 「崎家の秘書をしております島岡と申します。この度はうちの者たち及び

 世間知らずの義一お坊ちゃまが、ご迷惑をおかけしました。」と

 おぼっちゃま!のフレーズを強調して頭を下げた。



 「いえ、こちらこそ初対面の人に失礼な事を言ってしまいました」、と

 釣られて頭をさげると、その島岡さんはくすくすと笑いながら

 「あなたになら、このお坊ちゃまをお預けできると思うのですが・・

 どうでしょう?試しに1週間ルームメイトとして生活してみて頂けません

 でしょうか?どうしても嫌だとなりましたら直ぐにこのお坊ちゃまを移動

 させますので・・・」、とニッコリ微笑む。



  ちらりと、ギイこと、お坊ちゃまの様子を見ると、うんうん!と子犬の

 様に頷いている。 なんだか尻尾が見える・・・。

  僕の防衛本能はやめておけ!と警鐘を鳴らしている。

  しかし、この状況は不利だ。

  にこやかに微笑む島岡さんに、尻尾を振りまくるギイお坊ちゃま、更に

 頷いてくれと懇願するSP達の面々・・・・。

  気がつくと、先ほど消えたと思っていた先生が島岡さんの奥に成り行きを

 見守っていた。

  ハメラレタナ・・・!がっくり肩を落として、小さく頷くと

 「やった~!!」、とギイお坊ちゃまの喜ぶ声がホールに響いた。



 「1週間でしたよね?」、低くつぶやくと

 「はい、1週間です。」、島岡さんはまたニッコリ微笑んだ。

 「3日でもいいですか?」、また低くつぶやくと

 「3日もてば、たぶん1週間も1年も同じだと思いますよ」、さらにニッコリ

 返された。 それって、結局変更は無しってことじゃん・・・・



  騙された。



  それが、ギイとの最悪な出会い。









  その数時間後、学院内から黒い男たちはすべて消えてそれに

 喜ぶギイのおごりで、学食のから揚げ定食大盛りを頂くことに

 なった。



  僕の防衛本能はいまだ、警鐘を鳴らしている。


更新日:2013-11-12 12:48:56

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