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嬉しきかな?悲しきかな??

「ただいま~~。」

玄関にはまおの靴があるというのに、返事がない。

「ただいま~~??」

リビングに足を踏み入れると、静かな空間に鉛筆が紙を引っかく音がする。

カリカリカリ。

まおがコタツに入って、一生懸命問題集と格闘している。
ふと、手を止めてはくるくるとシャープペンを回す。
ん~~??と天井を向いて、考え込む。

「ただいま?」
「うっわあああ。びっくりしたあ。」

顔をのぞ込むと、びくうっと飛び上がって驚くまお。

「わあ。ごめん。ごめん。邪魔したかな?」
「あ。ううん。ちょうど、煮詰まってたところ。」

まおの手元をのぞくと、懐かしい何㎡に照明がいくつ必要だとか、柱が必要だとか、その計算式だとかが書いてある。

「わお。懐かしいなあ。」
「・・・えっ!?大ちゃんわかるのっ!?」

「そりゃあ。俺、建築専攻だったもん。・・・ほら、これをこうやって・・・・。」

式の途中でぐるぐると落書きになってしまっている部分から、まおのシャープペンを取り上げて書く。

「・・・・大ちゃん。すごいね~~。そんけ~~。」
「そりゃあ、大学に行ってるから当たり前だろ?」

「でも、すごい~~。ほんと、何でもできちゃうんだねっ!!」

キラキラ、と尊敬の眼差しで見詰められ、大学に行ってて、しかも建築専攻でよかったなあ。
などど、思わず両親に感謝する。

「腹、減ってない?・・・晩メシ、何にする?」
「あっ!!ごめんっ。まだ、何も用意してないよ。」

あたふたと問題集を片付け出すまお。

「いいって。まおは、勉強の続きしてろよ。パスタぐらいなら、冷蔵庫にあるもんで作れるからさ。」
「わあ。ありがとお。」

あ。この顔好き。
ふわ。と笑いながら俺を見上げてくる瞳がキラキラと輝いていて。

「お礼なんて言わなくていいよ。お前のその笑顔だけで、十分おつりがくるからさ。」

ちゅ。とうるうるぷるんと光る唇にキスをする。
あ。違うか。笑顔だけでおつりがくるから、キスつきだったら俺が得してるんだよな。

うきうき。
たまにはこうやって勉強しているまおを見ながら、キッチンに立つのも悪くない。
フライパンを振る腕も軽くなろうというものだ。


「ほら。まおできたよ~~。」
「うん。今行く~~。」

まおの後姿に声をかけると、久しぶりに作ったナポリタンを並べる。

「わあ。おいしそ~~。」
「ちょっとだけ、チリソース入れてあるからな。」

最近、辛いもの克服、を目指しているまおのために無理のない範囲からずらり、と並べられた調味料をセレクトしてみた。

「んん・・・・。あ。からい・・・けど、美味しいよ?」
「そうか?よかったあ。」

一瞬警戒した表情をみせるけれど、にぱあ。と笑ってくれる。
自分の作ったものを、美味しいよ。と言って食べてくれるのは、単純に嬉しいものだ。

だが、しかし。だ。

「ごちそう様~~。」とささっと食器を洗ったまおは、なぜか「おやすみ~~。」とベッドに向かってしまう。

「ちょっ・・・。まお、いくら何でも早くないか?」

まだ、7時を過ぎたところで。
いくら早寝早起きのまおと言えど、こどもでもこんな早くには寝ないぞ。

「だって、今日大ちゃんBACS10時半でしょ~~。それ見て、帰り待ってたら眠たくなりそうだから。仮眠しとく。じゃあ、出るときには起こしてね。いってらっしゃいはしたいから。」
「ええ~~。それまでどうすんだよ。俺。」

「一緒に寝る?」
「いや。この時間からは寝れないよ。さすがに。」

「ほんとに、ほんとに寝るからねっ!!ちょっかいかけたら怒るからね。」

俺がかまってほしくて、結局起こしてしまうのだろう。と見透かされていて、ドキっとする。

「わかった・・・。おとなしく、読書でもしてる・・・。」

うう。
確かに笑顔とキスだけで十分だとは言いましたけど。
収録終るまで、いちゃいちゃさえもおあずけですか~~???


更新日:2013-12-01 21:15:41

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