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展示から1週間。
朝、少し早めに学校へ向かい、私は自分の作品を見る。
ここにあるのは、あと5日。
大倉君の目に、少しでも入ったら嬉しいのに……
美術が終わって教室へ戻ると、
榎本君が、次の時間に提出予定の宿題写しに慌てていた。
脱いだ学ランのボタンが取れそうになっているのを見つけ、声をかける。
「ボタン? あ、本当だ」
「よかったら貸して、すぐにつけてあげるから」
「あぁ、悪いな」
「いいのよ、これでも手芸部ですから」
私はカバンから裁縫道具を取り出した。黒の糸を針に通し、一度ピンと張る。
「そうか、そうだよな、室井って手芸部だもんな、そうそう、そうだった」
「エ? 何、その言い方」
「いやいや、駿介がさ、あの職員室前に展示してある室井の作品、
いつも見ているんだ、あいつ気に入ってるみたい。うまいな、うまいな……って、
下から見たり、横から見たりしていた」
大倉君が? 私の作品を?
朝、少し早めに学校へ向かい、私は自分の作品を見る。
ここにあるのは、あと5日。
大倉君の目に、少しでも入ったら嬉しいのに……
美術が終わって教室へ戻ると、
榎本君が、次の時間に提出予定の宿題写しに慌てていた。
脱いだ学ランのボタンが取れそうになっているのを見つけ、声をかける。
「ボタン? あ、本当だ」
「よかったら貸して、すぐにつけてあげるから」
「あぁ、悪いな」
「いいのよ、これでも手芸部ですから」
私はカバンから裁縫道具を取り出した。黒の糸を針に通し、一度ピンと張る。
「そうか、そうだよな、室井って手芸部だもんな、そうそう、そうだった」
「エ? 何、その言い方」
「いやいや、駿介がさ、あの職員室前に展示してある室井の作品、
いつも見ているんだ、あいつ気に入ってるみたい。うまいな、うまいな……って、
下から見たり、横から見たりしていた」
大倉君が? 私の作品を?
更新日:2013-11-06 20:38:39