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今回一人旅をしようと思い立ったのは、バイトの先輩の話を聞いてからだった。

「広瀬、遊んでおけるのは大学2年までだぞ。
3年になったらグンと忙しくなる。
何より、近づいて来る就活から逃げたくなる、ストレスになる。
お先真っ暗だ」

それは流石に言い過ぎじゃ。
そう思ったが、先輩達の様子を見ている嘘ではないのかもしれない。
シフトから4年の先輩達の名前、そしてこの夏からは3年の先輩の名前までが消えはじめ、その負担は俺や後輩が埋めた。そしてその分お金も貯まっていく。
彼女もいなくて、実家暮らしなら当然といえば当然だ。

「だから女とも今のうちに遊んどけよ、広瀬。
家に引きこもっている場合じゃないぞ」

遊んどけよ、って言われても。俺は内心ほぞを噛んだ。

理系大学の情報学部に進学した俺は、まず女子の少なさに驚いた。
ある程度予想はついていたが、ここまでとは。
学科全体で120人の学生がいるのにも関わらず、女子は7人しかいなかった。
その中でも可愛いと思う女子には彼氏がいる、というのも難点だった。
かといってバイトの女の子とも恋愛関係までには発展しない。
そういった環境が女子と久しく遊んでいないという自分の惨めな現状を作り上げてしまったのだ。

やめよう。女子のことをいくら考えてもむなしくなるだけだ。
気を取り直して俺は、最初に先輩が言っていたことについて考えた。

遊べるのは、今しかない。

お金はある、時間もある。
なら、何をすればいいのだろう。
俺は迷っていたが、答えはたまたま本屋に売られていた本にあった。

更新日:2013-10-28 21:38:42

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