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Act.2 それぞれの想い

【Act.2 Scene1-①】~宗一郎~

あれから1年半。佳苗は中学を卒業した。
祖父の経営する私立校でエスカレーターなので、特に受験があるわけでもなく
普通に春休みを迎えていた。
彼女の華道家としての腕前は、目を見張るほどの成長ぶりで母さんは少し複雑な様子だ。
そして、なかなか妊娠の兆候もない。
俺は、やはり佳苗と同じ学校の大学院を卒業しても尚、研究員という名目で大学に残っている。教員免許も取っているし、教師になってもよかったのだが、佳苗のことでいつ何があるかわからないので、今のまま、自由な身でいたいというのが理由だった。
とはいえ、いつまでもこんなこともしていられないのだが・・・。

月に3、4日は、夜中に佳苗の部屋に行き、射精させる日々を続けていた。
眠っていれば、少しは抵抗も弱まるかと思ったのだが、やはり途中で目を覚ましてしまうことが多く、なかなかうまくいかない。
目隠しをしたり、手錠をかけたりして、どうにかことを済ませていたが、
正直俺は疲れきっていた。
どうやら、佳苗の中には望と佳苗の人格があるように思える。
正確には、望の中に佳苗の人格ができて、佳苗として生活をしているということだろう。
佳苗は、自慰に対してかなりの嫌悪感があるように思える。
何度繰り返しても慣れることもない、あの抵抗ぶりは少し異常だ。
そして、射精の前には必ず望と交代する。射精まで精神力が続かないのか?
望は、やはり男の子だ。自慰に対しても興味もあるようだ。
ただ、望でいる時間はとても短く、射精後は疲労感からか、すぐに眠りについてしまうため、望と話をするのは難しい。
望と佳苗について、望からももっと話を聞いてみたいのだが、なかなかうまくいかない。
俺は、様々な文献を読み漁ったが、どうしたらよいのか答えは見つからないでいた。

この春から佳苗は高校生だ。
そろそろ恋をしたりもするだろう。だが、その恋が成就するのは難しいだろうな。
そして、望は・・・?
俺は、俺のせいで、心の奥深くに閉じ込められてしまった望に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
望はずっと何を思っていたのだろうか?そしてなぜ、この時期になって姿を現すようになったのだろうか?
いつしか俺は、望のことを考えて過ごす時間が増えていた。


更新日:2013-10-29 23:12:45

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