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「ひゃー、すごい人込みだね」

「雅紀、はぐれるなよ」

大晦日のこの日。
もう、年を越しちゃったけど。
俺たちはコンサートホールにいる。
たまたま応募して、当たった一枚のハガキ。
こんな機会は滅多にないので、翔ちゃんを誘って行った。
のは、いいんだけど。
帰りになって気づいた。
まさか、ここまで人が多いとは。

「でも、楽しかったね」

「ああ、雅紀と同じ名前の奴、結構かんでたな」

「翔ちゃんと同じ名前の人だって!」

俺たちと同姓同名の人たちが、司会をやるって聞いて応募したんだ。
でも、同じ名前の翔ちゃんでも・・・。

「こっちの翔ちゃんの方がカッコよかったよ」

「ん?何か言った?雅紀」

「ううん、何でもない」

翔ちゃんと並んで歩いてるけど、駅に近づくにつれ、人が多くなっていく。
俺も翔ちゃんも、背は高い方だから、お互いを見失いはしないけど。

「え?翔ちゃん!」

「雅紀!」

一気に人込みが増して、俺と翔ちゃんが離された。
その時、翔ちゃんが俺に手を伸ばした。
俺も翔ちゃんに手を伸ばす。
もう少し。
人込みを少し掻き分けて、その手が繋がれた。

「翔ちゃん」

「雅紀、大丈夫か?」

「うん、よかった」

「手、繋いで行くぞ」

「え?」

「はぐれたら困るだろ?」

「うん」

翔ちゃんは俺の耳元で囁いた。

「こんなに堂々と人前で手を繋ぐなんて、滅多にないからな」

「う、うん」

翔ちゃんは俺を見て、頬を触った。

「寒い?雅紀」

「え?」

「赤くなってる」

それは翔ちゃんに言われた事で、赤くなってるだけなんだけど。

「ちょっとだけ」

更新日:2014-01-16 21:00:49

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俺の隣のすとーかーちゃん 番外編