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決意

目が覚めて、自分がどこにいるのか分からなかった。

異様に重い体。
息をするのが苦しくて、ただ横になっていることが精一杯で。

辿った記憶の先には、テミンの声。

車の中で急に力が抜けて、意識が遠退いたことは覚えている。
その後、何度もテミンに名前を呼ばれたことも。


ツアーの途中。
弱音を吐きそうになる度に、自分に喝を入れて。

どうしても、頑張りたかった。

これが、最後になるかもしれない。
そう、思っていたから。

上手く言葉を伝えることができないほど弱ってしまった体は、言うことを聞いてくれなくて。
もう何日も、力のない声しか紡げない。


病室にノックの音が響いて、扉が開いた気配。

テミンは夕方に来ると連絡が来ていたのに。
時間が変わったのかもしれないと思ったけれど、いつもの元気な声が聞こえない。

ゆったりとした足音は、テミンのものではない気がした。

視線を送るよりも一瞬早く。

「ミノ」

優しい声に、肩の力が抜ける。

「具合どう?」

上から覗き込みながら微笑んでいるオニュ。

「ヒョン…」

「ん?テミンかと思った?」

少し楽しそうな声音でそう言ってから、隣にゆっくりと腰を下ろした。

「たまには、さ。テミンばっかりじゃ飽きちゃうかなーって。」

テミンが聞いたら怒るかな、なんて。
クスクスと笑っている。

なんだか突然空気が穏やかになったな、と思っていたら。

「ミノー、元気か?」

一度閉じた扉が勢いよく開いて、ジョンヒョンが姿を見せた。

「テミンばっかじゃ飽きると思って来てやったぞー。」

同じことを言っているのが可笑しくて、思わず零れた笑み。

「おぉ、笑ってる。」

「ほんとだ。」

「ちょっ、と…あんま、笑わせないで……」

苦しくて胸を押さえても、つい笑ってしまう。

「ごめん、ごめん」

笑いながらオニュが背中をさすってくれて、ジョンヒョンはその隣で満面の笑み。

一気に明るくなった病室に、久々に気持ちが軽くなった気がした。


更新日:2014-11-06 23:29:27

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